乳牛におけるイネホールクロップサイレージの可消化養分総量と粗飼料価指数
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
各種イネホールクロップサイレージを乳牛に給与した場合の可消化養分総量は47~55%、粗飼料価指数は56~95(分/kg乾物)である。これらは代表的な輸入粗飼料であるチモシー乾草と同程度である。
- キーワード:イネホールクロップサイレージ、乳牛、可消化養分総量、粗飼料価指数
- 担当:畜産草地研・栄養素代謝研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8655
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
イネホールクロップサイレージは穀実とケイ酸含量が高く難消化性の茎葉からなり、他の牧草・飼料作物とは異なる栄養特性を有している。そこで、イネホールクロップサイレージの繊維および非繊維性炭水化物の利用特性、可消化養分総量(TDN)ならびに総咀嚼時間(粗飼料価指数、RVI)を、他の粗飼料資源との比較により明確にする。
成果の内容・特徴
- 乾乳牛のべ45頭(体重631±57kg)(平均値±標準偏差)に維持量程度のイネホールクロップサイレージを給与する消化試験を実施し咀嚼時間を測定した結果である。その際、熟期、品種、収穫機械等の条件が異なるイネホールクロップサイレージを供試し、トウモロコシサイレージ(ナスホマレ、黄熟期刈取、切断長9mm)およびチモシー乾草(輸入、出穂後期から開花期のもの、切断長2~3cm)を対照としている。なお、給与飼料の粗タンパク質含量は12%程度になるよう大豆粕あるいは尿素を添加している。
- トウモロコシサイレージは可消化中性デタージェント繊維(NDF)および可消化非繊維性炭水化物(NFC)含量に富み、TDN含量は70%程度と高い栄養価を示す。輸入チモシー乾草のTDN含量は55%程度で、可消化NDFで大部分構成される。一方、イネホールクロップサイレージのTDN含量は47~55%の範囲である(図1)。
- イネの登熟に従い可消化NDF含量は減少、可消化NFC含量は増加する。イネの可消化NFC含量が高いとTDN含量も高くなる傾向を示す。一方、クサホナミのような可消化NDF含量の高い高TDN品種もある(図1)。
- イネホールクロップサイレージのRVIは56~95(分/kg乾物摂取量)の範囲であり、平均値(76)はチモシー乾草とほぼ同程度である(図2)。
成果の活用面・留意点
- RVIを加味したイネホールクロップサイレージの飼料設計の参考になる。
- 本結果は、乾乳牛に維持量程度のイネホールクロップサーレージを給与して得られた成果であるため、生産水準の給与を行う場合にはTDNの低下が見込まれる点に留意する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:効率的・持続的な乳肉生産技術開発のための家畜の栄養素配分調節機構の解明
- 中課題整理番号:212h
- 予算区分:交付金プロ(飼料イネ周年放牧)
- 研究期間:2004~2008年度
- 研究担当者: 樋口浩二、田鎖直澄、野中最子、田島 清、藪元悠介、都丸友久(群馬畜試)、大谷文博、小林洋介、石川哲也、栗原光規、永西 修
- 発表論文等:樋口ら(2009)畜草研研報、9: 1-14