放牧後のイタリアンライグラスを利用した大豆のリビングマルチ栽培
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要約
放牧に用いた晩生のイタリアンライグラスの再生草を、枯殺せずにリビングマルチとして大豆を不耕起栽培する方法は、大豆の初期生育時の雑草発生を抑えることができ、除草剤を用いる不耕起栽培法と同程度の収量が得られる。
- キーワード:イタリアンライグラス、大豆、不耕起栽培、リビングマルチ、放牧
- 担当:畜産草地研・山地畜産研究チーム
- 代表連絡先:電話0267-32-2356
- 区分:畜産草地、共通基盤
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
小規模移動放牧により復元された農地を維持するためには、放牧利用を組み込んだ集落全体の土地利用計画を構築していく必要がある。そのためには、省力・省資源的な放牧と一般作物との輪作技術を開発する必要がある。そこで、省力栽培が可能な大豆の不耕起狭畦栽培における省資源化を図るため、放牧に用いたイタリアンライグラスを被覆植物として雑草抑制に用いる大豆のリビングマルチ栽培について検討する。
成果の内容・特徴
- 耕作放棄地等を利用して9月中にイタリアンライグラス草地を造成し(播種量6kg/10a、N-P2O5-K2O:10-7.5-5kg/10a)、冬季から大豆播種前までに1~数回肉用繁殖牛を放牧する。大豆の播種時期(6月中旬)にイタリアンライグラスの草高が5cm程度になった段階で退牧させ、直後に不耕起播種機(ニプロNSV600B)を用いて大豆を無施肥で播種する(1粒播、畦間30cm、株間13cm)。大豆播種後の作業は、土壌処理型除草剤の処理を行わない以外、大豆不耕起狭畦栽培法に準じて行う(図1)。
- イタリアンライグラス再生草の草高は、早生品種を用いても、大豆出芽後約1ヶ月間は、大豆の主茎長と拮抗するが、その後は、大豆が上回り、本葉の展開によってイタリアンライグラスの生育を抑制する(図2)。また、夏以降イタリアンライグラスは、衰退枯死するため、大豆収穫に影響しない。
- イタリアンライグラスリビングマルチ栽培は、これを除草剤で枯殺した後に大豆を不耕起播種する方法(対照)に比べ、広葉雑草の発生量が若干多いが、大豆の初期生育に影響するシロザやヒユ類の発生量は少なく、雑草抑制効果が高い(表)。特に、晩生のイタリアンライグラス「エース」は、早生品種の「タチワセ」を用いた場合や対照と比べて、夏季以降に発生するメヒシバの抑草効果も高い。
- 晩生のイタリアンライグラスをリビングマルチとして用いることにより、対照と同程度の300kg/10a以上の大豆子実収量が得られる(図3)。
成果の活用面・留意点
- 大豆の減農薬栽培に活用できる。
- 本成果は、長野県御代田町内の標高約900mの地帯において、大豆中生品種「ナカセンナリ」、イタリアンライグラス晩生品種「エース」を用いた試験によるものである。他地域及び他品種で実施する場合、播種時期、放牧期間等についての検討が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
- 中課題整理番号:212d.5
- 予算区分:基盤、交付金プロ(飼料イネ周年放牧)
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:池田哲也、手島茂樹