腟内温度測定システムを用いた放牧地における発情発見

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要約

腟内温度測定システムを用いて腟内温度を測定することにより、前日の3日間における同時刻の平均温度より0.4°C以上の上昇が4時間以上継続すると高い割合で放牧牛の発情が検出できる。

  • キーワード:肉用牛、放牧、発情発見、腟内温度
  • 担当:畜産草地研・山地畜産研究チーム
  • 代表連絡先:電話0267-32-2356
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

放牧条件下において牛の発情を的確に把握するには多大な労力と時間が必要となることから、省力的な発情発見方法として、近年、牛の生体情報をモニタリングする装置が利用されている。そこで、インターネット上から腟内温度変化を24時間モニタリングすることが可能な分娩予知装置を利用して、腟内温度測定システムによる発情発見方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 腟内温度は発情前に低下が起こり、発情時には急激に上昇するが、概日リズムによって変化しており(図1)、発情による温度変化を短時間に区別することは困難である。ところが、基準日数、上昇温度、持続時間の3項目に基準を設定することにより発情検出がより正確になる。表1に示すとおり、前日の3日間における同時刻の平均温度より0.4°C以上の上昇が4時間以上継続すると発情である割合が高い。
  • 腟内温度変化による発情検出は、万歩計による発情行動の活動量が増加した時期からおよそ9時間後にあたり、平均してその21時間後に排卵が起こる。従って、発情の検出と排卵時期の特定をすることができ、従来のように発情観察を頻繁にすることなく、発情検出後7~17時間目に適期の授精が可能となる(図2)。
  • 腟内温度測定システムを用いた発情発見後の人工授精の受胎率は、発情行動の観察による発情発見方法と同等の受胎率が得られ(表2)、発情観察に係わる時間が大幅に削減される。

成果の活用面・留意点

  • 電波の受信距離はおよそ30mであり、小規模放牧における発情発見に利用できる。広い放牧地での利用には多数の受信機が必要となる。
  • 腟内温度計を長期間腟内に留置することから腟炎の発症が危惧されるため、腟内温度計挿入時には腟内汚染に注意する。
  • 本成果は、5月から11月までの平均気温が10.7°C(最高32.3°C、最低~4.6°C)で、標高1,000mの放牧地においての試験結果である。

具体的データ

図1 発情時における腟内温度変化

図2 発情時の腟内温度変化と排卵 (↓) が確認された時間

表1 各設定条件における発情発見成績

表2 腟内温度計を用いた発情発見による人工授精( AI) 成績

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 中課題整理番号:212d.5
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:後藤裕司、木戸恭子