低硝酸イタリアンライグラス中間母本候補系統「LNG5」の硝酸態窒素蓄積特性

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要約

低硝酸イタリアンライグラス中間母本候補系統「LNG5」は茎葉の硝酸態窒素濃度が低い。「LNG5」幼植物では根による硝酸態窒素吸収量は変わらない。茎葉への窒素輸送量は同等であるが、硝酸態窒素輸送量が低下し、アミノ酸態窒素輸送量が増加している。

  • キーワード:イタリアンライグラス「LNG5」、硝酸態窒素、輸送、蓄積、土壌肥料
  • 担当:畜産草地研・飼料作生産性向上研究チーム
  • 代表連絡先:電話0287-36-0111
  • 区分:畜産草地、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

飼料畑に多量の家畜ふん尿や窒素肥料が投入されると、作物中に硝酸態窒素が高濃度に蓄積され、反すう家畜に対して硝酸塩中毒を引き起こす。そのため、硝酸態窒素を蓄積しにくいイタリアンライグラス育種を進め、硝酸態窒素濃度が市販品種中で最も低い品種より34%低い中間母本「LNG5」を育成した。「LNG5」の硝酸態窒素蓄積特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 牛ふん堆肥を連用した多窒素圃場条件で低硝酸態窒素選抜第2世代から第5世代(「LNG5」)を栽培すると、世代が進むごとに出穂期における茎葉部の乾物あたり硝酸態窒素濃度が低下する。これは新鮮物あたり硝酸態窒素濃度の低下と乾物率の増加に由来する(図1)。また乾物収量は同等である(2006年度畜産草地研究成果情報)。
  • 人工気象機内で生育させた「LNG5」幼植物は選抜第1世代と比較して新鮮物あたり硝酸態窒素濃度が低下し乾物率が増加する(表1)。根部による硝酸態窒素吸収量は変わらないが、茎葉部切断により調べた、根部から茎葉部に輸送される硝酸態窒素量は減少する。一方、アミノ酸態窒素輸送量は増加しているため、茎葉部への窒素輸送量は同等である。
  • 硝酸態窒素の代わりにアンモニア態窒素を含む培養液で栽培した幼植物について、茎葉部と根部を切断し、根部の影響を抑えた状態で切断茎葉に同一濃度の硝酸態窒素溶液を直接吸収させた場合、「LNG5」は選抜第1世代と比較して硝酸還元酵素活性は変わらないが、新鮮物あたり硝酸態窒素濃度は低下している(表2)。この結果から切断茎葉で評価した茎葉部の硝酸態窒素蓄積性も低下していることが示唆される。以上のことを図2にまとめる。

成果の活用面・留意点

  • 「LNG5」を母材とした低硝酸態窒素イタリアンライグラス実用品種の普及時に、低硝酸態窒素濃度となる理由を説明できる知見である。

具体的データ

図1 選抜第 2 世代から第 5 世代( LNG5 )における乾物あたり硝酸態窒素濃度 (a) 、新鮮物あたり硝酸態窒素濃度 (b) 、乾物率 (c) の世代間比較

表1 幼植物を用いた選抜第1世代と第5世代 (LNG5) との比較

表2 切断茎葉を用いた選抜第1世代と第5世代( LNG5 )との比較

図2 「 LNG5 」の硝酸態窒素低減化機構

その他

  • 研究課題名:飼料生産性向上のための基盤技術の確立と土地資源活用技術の開発
  • 中課題整理番号:212e.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:川地太兵、須永義人、原田久富美、畠中哲哉