わが国で生産された体細胞クローン牛およびその後代牛における死亡発生の実態
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要約
体細胞クローン牛では、死産、生後直死や幼若期の病死率が一般牛よりも高いが、生後200日齢ころまでに一般牛と同水準の病死率になる。一方、後代牛における死産、生後直死および病死の発生率は、全期間で一般牛との有意な差異は認められない。
- キーワード:牛、体細胞クローン牛、後代牛、死産、生後直死、死産
- 担当:畜産草地研・高度繁殖技術研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7382
- 区分:畜産草地
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
国内関係機関の協力に基づく転帰の全国調査(2006(平成18)年7月実施)による482頭の体細胞クローン牛(その時点までに全国で生産された牛の97.5%)と202頭の後代牛のうち、対照群が得られた黒毛和種とホルスタイン種のデータを分析し、わが国で生産された体細胞クローン牛およびその後代牛における死亡発生の実態を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 死産の発生率は、体細胞クローン牛:16.4 % (74/451)、後代牛:8.9 % (11/124)および一般牛:4.6 % (26/566)である。有意差は、体細胞クローン牛と後代牛との間 (P<0.05)、体細胞クローン牛と一般牛との間 (P<0.01)で認められるが、後代牛と一般牛との間では認められない(図1)。また、生後直死の発生率は、体細胞クローン牛:14.4 % (65/451)、後代牛:0.8 % (1/124)および一般牛:1.9 % (11/566)である。有意差は、体細胞クローン牛と後代牛との間(P<0.01)、体細胞クローン牛と一般牛との間 (P<0.01)で認められるが、後代牛と一般牛との間で有意性は認められない(図1)。調査表に死因が記載されていた症例において、生後直死の50.7 % (35/69)が窒息、羊水誤嚥などの呼吸障害による死亡である。これらは、一般牛にも起こる死因であって、体細胞クローン牛に特有なものではない。
- 体細胞クローン牛の病死率は、生後200日齢頃まで一般牛よりも高い傾向を示すが、それ以降は一般牛同様に極めて低いレベルで推移する(図2)。一方、後代牛においては生後2日目以降、一般牛とほぼ同等の死亡率で推移する(図2)。調査表に死因が記載されていた症例(体細胞クローン牛)における生後2~3日の死因は、窒息などの呼吸障害(6/17)や心臓奇形(2/17)が多い。それ以降の病死では、肺炎によるもの(12/60)が最も多い。また、後代牛では死因の記録が残っていない症例が多いため、死因の傾向は明らかでない。
- 以上の結果より、黒毛和種における肥育もと牛の出荷(約10カ月(300日)齢)や食肉出荷(24カ月(720日)齢以降)、ホルスタイン種雌の初産分娩(24カ月(720日)齢以降)の時期に生存している体細胞クローン牛の死亡率は一般牛と同等である。
成果の活用面・留意点
- このデータは、食品安全委員会による「新開発食品評価書:体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品」に引用されている。
具体的データ


その他
- 研究課題名:高品質畜産物生産のためのクローン牛等の安定生産技術の開発
- 中課題整理番号:221n
- 予算区分:基盤、実用技術
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:渡辺伸也、赤木悟史、金田正弘、ソムファイ タマス、永井 卓
- 発表論文等:Watanabe S and T Nagai (2009) Anim. Sci. J. 80: 233-238