飼料作物病害標本データベースの作成と飼料作物病害図鑑による公開

要約

畜産草地研究所で保管する飼料作物病害さく葉標本の病名、採集地等の情報をデータベース化し、これをインターネット版飼料作物病害図鑑で公開する。この図鑑には主要病害の病徴、病原菌、生理・生態および防除法に関する解説を加え、文献とリンクさせる。

  • キーワード:飼料作物病害、病害さく葉標本、データベース、インターネット
  • 担当:畜産草地研・畜産温暖化研究チーム、飼料作環境研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

作物病害の乾燥さく葉標本は、病害発生記録およびDNA分析材料として菌学分野で近年特に重要視されており、そのデータベース化が期待されている。そこで、畜産草地研究所が所蔵する数多くの飼料作物病害さく葉標本について、その標本情報をデータベース化し、公開済みのインターネット版「飼料作物病害図鑑」上で公開するとともに、各飼料作物病害の防除情報およびリスク評価などを加えて同図鑑の改訂を行う。

成果の内容・特徴

  • インターネット上で公開中の「飼料作物病害図鑑」では、トウモロコシごま葉枯病、紋枯病(図1)、ソルガム麦角病、紫斑点病、オーチャードグラス葉腐病、炭疽病、ライグラスいもち病、冠さび病、暖地型牧草ミイラ穂病、アルファルファ菌核病など主要な38の飼料作物病害について新たに解説ページを加え、各病害の病徴、病原菌、生理・生態および防除法について情報を得ることができる。また、主に1980年以降各病害について報告された文献を解説する形で加えており、各文献がウェブ上で公開されている場合、解説ページにリンクし読むことができる。
  • 各病害につき、畜産草地研究所那須研究拠点に保管されている1950年から1987年にかけて採集された952点の飼料作物病害さく葉(図2)の標本情報(病名,感染微生物種名,植物種名,採集地,採集年月日,採集者等)がデータベース化されており、一覧表で見ることができる。
  • 各病害の発生リスク評価については、発生県数、被害程度および抵抗性品種数に応じてそれぞれ1~3点の評点を付け、その平均値からリスク高(評点2.5点以上)、リスク中(評点2.0~2.5点未満)およびリスク低(評点2.0点未満)の評価スコアを付けている。

成果の活用面・留意点

  • インターネット公開された標本情報から主要な飼料作物病害の発生分布、過去の発生履歴などを知ることができる。
  • 改訂版「飼料作物病害図鑑」は、現在までの30年間の文献情報を網羅しており、防除法等に関連する具体的な内容を知ることができる。
  • 研究担当者に連絡すれば、研究機関等へは標本の貸し出しが可能である。
  • リスク評価については、学会等で認められた統一的な方法がないことから本データベース独自の評価方法を採っており、絶対的な評価基準ではない点に注意が必要である。

具体的データ

標本情報を加えた「飼料作物病害図鑑」のトウモロコシ紋枯病解説画面

飼料作物病害さく葉標本の例

その他

  • 研究課題名:飼料生産性向上のための基盤技術の確立と土地資源活用技術の開発
  • 中課題整理番号:212e.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:月星隆雄、岡部郁子、菅原幸哉
  • 発表論文等:飼料作物病害図鑑(http://www.naro.affrc.go.jp/org/nilgs/diseases/dtitle.html)