最後胸椎部位から体長1/2部位のロース断面積推定は可能である
要約
豚では超音波探傷器で最後胸椎部位のロース断面積を測定し、農場、体重区分および生年月を考慮して品種ごとに補正を行うことにより、体長1/2部位のロース断面積を推定することができる。
- キーワード:豚、ロース断面積、測定部位、超音波探傷器
- 担当:畜産草地研・家畜育種増殖研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-8611
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
豚のロース断面積は重要な改良形質である。生体においては超音波探傷器によって、ロース断面積を測定することが可能であり、それによる遺伝的改良の有効性が認められている。能力検定では、ロース断面積は、検定終了時(105kg)に体長の1/2部位でのロース断面積(SEM1/2)をBモードタイプの超音波探傷器によって測定することとなっている。この方法では、豚を保定後、体長を測尺することにより測定部位を決定する必要がある。そのため、測定部位のずれは少ないが、労力と時間がかかる。最後胸椎部位は保定をしなくても触診によって測定部位を決定することが可能であるため、多数の豚のロース断面積を短時間で測定できる。そこで、生体で測定した最後胸椎椎部位のロース断面積(SEML)からのSEM1/2の推定が可能かどうか、さらに、その場合に影響を及ぼす要因を明らかにする。
成果の内容・特徴
- デュロック種のロース断面積では、体長1/2部位と最後胸椎部位に差は認められず、測定時の体重にも影響されない。他品種では測定時体重により2部位間の大小関係が異なる(表1)。2部位間のロース断面積の相関係数は、全体的に低い値を示したが、この原因は農場ごとの測定精度のばらつきによる。
- SEMLによるSEM1/2の推定においてSEMLの偏回帰係数(傾き)は全てのモデルで有意となり、性の効果を除き、全ての効果が有意である。また、品種ごとに傾きの異なるモデル式の当てはまりが最も良い(表2)。
- 品種別に分析した場合、体重区分を問わずSEMLの傾きはほぼ一定となる。
成果の活用面・留意点
- 遺伝的能力評価に用いる場合、最後胸椎部位のロース断面積と体長1/2部位のロース断面積を別形質として扱い、遺伝相関により体長1/2部位のロース断面積の育種価を推定することが望ましい。
- 農場ごとに測定精度のばらつきが認められるため、最後胸椎部位のロース断面積を測定するにあたり、十分な練習が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:家畜生産性向上のための育種技術及び家畜増殖技術の開発
- 中課題整理番号:212j
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:石井和雄、佐々木修、西浦明子、佐藤正寛
- 発表論文等:石井ら (2010)日豚会誌、47(3):
127-135