クリーピングベントグラス組換え体と交雑可能性のあるAgrostis属在来種の同定
要約
アメリカ合衆国で開発された除草剤耐性遺伝子組換えクリーピングベントグラス品種が将来我が国に導入された場合、レッドトップとコヌカグサは交雑する可能性がある。
- キーワード:クリーピングベントグラス、レッドトップ、コヌカグサ、交雑、遺伝子組換え体
- 担当:畜産草地研・飼料作物育種工学研究チーム、北海道大学FSC、岡山大学資源生物科学研究所
- 代表連絡先:電話029-838-8611
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
クリーピングベントグラス(学名Agrostis stolonifera, 和名ハイコヌカグサ、英名Creeping bentgrass, 以下CBと略)はゴルフ場の良質な芝草として広く用いられており、米国では除草剤グリホサート耐性の遺伝子組換え体が作出されている。将来一般栽培が承認された場合にはCBと近縁な野生種が我が国に自生するので、花粉を介した交雑による組換え遺伝子拡散の可能性がある。そこでCBと交雑可能性のあるAgrostis在来種を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 我が国に自生する各種Agrostis属植物(レッドトップ(RT)、コヌカグサ、ヒメコヌカグサ、ヤマヌカボ、バケヌカボ、ナンカイヌカボ)でCBと那須塩原市の野外での開花期が重なる種はRT、コヌカグサ、バケヌカボ、ヤマヌカボである(表1)。
- 上記の各種Agrostis属植物にエゾヌカボを加えたものを種子親、CBを花粉親として交配すると、RTとCB(図1)あるいはコヌカグサとCBとの間で雑種植物が得られる。雑種であることはrDNAを用いたサザン解析によりDNAレベルで確認できる(図2)。また、CBとRTとの雑種は高い花粉稔性を示し、放任受粉下で結実する。
- CBとRTとの雑種、及びその後代植物の競争性の一指標である乾物重について、ほ場における隣接条件下で栽培した場合に親植物と比較すると、札幌では雑種が親植物よりも高く、那須塩原では低い(表2)。
成果の活用面・留意点
- カルタヘナ法に基づきCB組換え体の第1種栽培承認申請を行う際に必要なデータへの参考となる。
- CBとRTの雑種、及びその後代の生育については気象条件の異なる札幌と那須塩原で異なる結果が得られ、より長期の観察が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:飼料作物の育種素材開発のためのDNAマーカー利用技術と遺伝子組換え技術の開発
- 中課題整理番号: 221l
- 予算区分:委託プロ(安全性確保)
- 研究期間:2008?2010年度
- 研究担当者:高溝正、清多佳子、山田敏彦(北大FSC)、榎本敬(岡山大学資源生物科学研究所)