二毛作で収量の安定確保と作業時間・コスト削減が可能なトウモロコシ簡易耕播種
要約
夏作トウモロコシの播種においてディスクハロによる簡易耕とトリプルディスク方式の不耕起播種機を組み合わせることで、冬作ライムギの収穫跡地における作業でも軽労化の達成と耕起播種と同程度の収量確保が可能である。
- キーワード:不耕起播種機、ディスク耕、トウモロコシ、ライムギ、二毛作
- 担当:畜産草地研・飼料作生産性向上研究チーム
- 代表連絡先:電話 029-838-8611
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
都府県における飼料作では、耕地面積の狭隘さを二期作や二毛作などによる複作化で補い多収の達成を試みている。しかしながら関東北部のような二毛作北限地帯では、作目の切り替え時期に作業(冬作集草・夏作播種)が重なり繁忙期が発生しやすく、特に夏作トウモロコシ播種は作業が多工程から成り、多大な労力を必要とするため、作付け面積の維持拡大を阻害する要因となっている。そこでトウモロコシ播種において作業工程数を削減し軽労化を実現するために、ディスクハロによる簡易な耕うんと、トリプルディスク方式の不耕起播種機を組み合わせた「トウモロコシ簡易耕播種」の作業体系を設計し冬作収穫跡における軽労なトウモロコシの播種・栽培技術の開発を行った。
成果の内容・特徴
- トウモロコシの簡易耕播種は図1に示す工程で実施され、冬作ライムギの収穫跡における土壌の撹乱はディスクハロ(2回走行)による簡易耕のみで行われる。
- そのため簡易耕播種では慣行耕起区と比べ反転耕、砕土耕、攪拌耕の3工程を削減することができ、全体の作業工程数は5工程と少なくなる(図1)。
- 工程数の削減により、堆肥散布も含めた播種作業にかかる燃料消費量は60%以上、作業時間は約40%以上が削減可能となる(表1)。
- 簡易耕播種の導入によりトウモロコシの苗立率は平均84%と、冬作の収穫直後に播種作業を行う完全不耕起(平均53%)と比べて高く、かつ安定させることが可能となっている(図2)。慣行耕起(平均89%)より低下しているが、播種機における播種密度の設定は変更可能なため(範囲2,840~20,200本/10a)、あらかじめ苗立率の低下を折り込み、播種量を増加(厚播)することで対応が可能である。
- 苗立率が高くなり安定することで、簡易耕播種における最終的なトウモロコシの乾物収量は完全不耕起と比べて増加する(図3)。また播種密度を高く設定し慣行耕起との苗立率の差を補うことで慣行耕起と同程度の収量確保が可能となり(図3)、その結果、播種に関わるコストが低減される(表1)。
成果の活用面・留意点
- この播種技術は冬作をライムギとした飼料二毛作条件において活用できる。導入先としてはコントラクターや大規模農家を想定している。
- この技術は褐色低地土・黒ボク土の土壌条件において検討された。重粘土壌の場合や、冬作をイタリアンライグラスとした場合でも適応可能かどうかについては、さらに検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:飼料生産性向上のための基盤技術の確立と土地資源活用技術の開発
- 中課題整理番号:212e.1
- 予算区分:基盤、国産飼料プロ
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:森田聡一郎、小林良次、菅野勉、佐藤節郎