小型化したスラリー浅層施用機のほ場における所要動力とトラクタ作業

要約

タンク容量3m3、質量3.3t、作業幅2.4mで深さ10cm程度の溝を切るスラリー浅層施用機は、牽引抵抗が4.3kN、牽引所要動力が6.5kW(1.5m/s)であり、3型式のトラクタ作業では条件によってすべりが大きく、牽引できない場合がある。

  • キーワード:浅層施用、スラリー、牽引抵抗
  • 担当:畜産草地研・飼料作環境研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

家畜ふん尿などの有機質資材は、その有効かつ環境に配慮した利用法の確立が求められている。スラリー等の液状の資材は悪臭や土壌表面流亡を避けるため土壌中に施用する作業機が開発されている。しかし、容量が大きく、牽引抵抗が大きな作業機となっていた。浅層施用で牽引抵抗を小さくした浅層型スラリーインジェクタ小型改造III号機(成果の活用面参照)ではおよそ70kWクラス以上の大型のトラクタが必要であるとされてきた。そこで、これをさらに小型化し、40~60kW程度のトラクタでのほ場での牽引作業の可能性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 試作した浅層施用機は、スラリータンク、ポンプ、分配装置、溝切り施用ユニットで構成される。タンク(5→3m3)及びポンプ(10670→6150L/min)が小さくなり、作業幅を短縮(3.2→2.4m)するとともに、溝切り施用ユニット間隔を変更(40→30cm)したものである。真空ポンプによってタンクから押し出された液は、分配装置を経て溝切り施用部に送られ、ディスクコールタで開けられた溝に吐出される。作業幅2.4m、施用条数は8条で、施用間隔は30cmである。溝切り部のディスクコールタは厚さ15mm、直径305mmで、直径82mmの円筒により最大の溝深さは約11cmに制限される構造である(図1、表1)。
  • 試作機の牽引抵抗は溝切りコールタ作用深さ4~10cmで0.7~4.3kN、速度1.5m/s、溝切深さ10cmにおける所要動力は6.5kW、ポンプ駆動に要する最大動力は11kW程度である(表2)。ヒッチ点における荷重はタンク満量(施用機総質量6.3t)時に6.6kN、タンク空時に0.9kN(表1)である。
  • 3型式のトラクタを用いて牽引すると、傾斜1.8°では車輪のすべり率は大きくないが、傾斜が増えると36.8kWトラクタでは走行不能に、36.0kWトラクタでは4.6°で後輪のすべり率が30%を超えて作業が困難になる。58.8kWトラクタではすべり率は大きくない(表3)。36.0kWトラクタの3.6°傾斜では、作業速度が0.9m/s程度までは、エンジン回転数の低下は100rpm程度であるが、1.0m/sを超えると回転数低下が顕著になり、実用上作業不可能になる。58.8kWトラクタでは1.6m/sまでエンジン回転数の低下は少ない。

成果の活用面・留意点

  • 平成17年度の研究成果情報「臭気抑制効果と作業効率が高い浅層型スラリーインジェクタ小型改造III号機」の小型化を図ったものである。作業時の旋回半径が6m程度であるので、短辺24m規模のほ場に適用できる大きさである。施用機での作業に要する動力を知る上での参考になる。
  • ほ場での施用作業においてトラクタ牽引性能を確認したものであり、ブレーキ性能は確認していない。

具体的データ

試作のスラリー浅層施用機 施用機の主要諸元

 

 

施用機の牽引およびポンプの所要動力

 

 

ほ場傾斜における牽引トラクタ車輪のすべり率

その他

  • 研究課題名:草地飼料作における減肥・減農薬の環境対策技術の検証と新たな要素技術の開発
  • 中課題整理番号:214r
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:伊吹俊彦、住田憲俊、井上秀彦、澤村篤