泌乳牛の尿量は窒素およびカリウム摂取量と乳量から推定できる

要約

泌乳牛の尿量は推定式「尿量(kg/日)=−2.2870+0.0231×窒素摂取量(g/日)+0.0518×カリウム摂取量(g/日)−0.3350×乳量(kg/日)」によって精度良く推定できる。

  • キーワード:泌乳牛、尿量、窒素摂取量、カリウム摂取量、乳量
  • 担当:畜産草地研・栄養素代謝研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

泌乳牛は他の家畜に比べて極めて大量の尿を排せつし、その量がふん尿の貯留施設の容量や堆肥化処理に必要な水分調整用副資材の必要量に影響するため、泌乳牛の尿排せつ量を把握することは重要である。また、栄養素摂取量と尿量の関係が明らかとなれば、泌乳牛の尿量を低減する栄養管理の実践が可能となる。そこで、日本飼養標準・乳牛(2006年版)で使用された尿量データを基にして、泌乳牛の尿量を精度良く推定できる推定式を作成する。

成果の内容・特徴

  • 表1に概要を示すデータセット(回帰式作成用)から作成された日本飼養標準・乳牛(2006年版)に提示されている尿量と窒素摂取量およびカリウム摂取量との回帰式(表2(1)式)に比べ、変数としてさらに乳量を加えた新たな回帰式(表2(2)式)は寄与率が上昇し、標準誤差が低下する。
  • 日本飼養標準・乳牛(2006年版)の改訂後に得られたデータセット(表1、回帰式検証用)を用いて、乳量を加えた新たな回帰式の尿量推定式としての有効性を検証したところ、この回帰式から算出される推定尿量と実測尿量には、
    推定尿量=1.0054×実測尿量 (R2=0.6538, P<0.001)
    の関係が観察されることから、この回帰式は泌乳牛の尿量推定に有効である(図1)。
  • 各変数の標準回帰係数は窒素摂取量が0.387、カリウム摂取量が0.745、乳量が-0.213であり、カリウム摂取量はこの変数の中で尿量に対する影響が一番大きい。

成果の活用面・留意点

  • ふん尿貯留施設の設計時や堆肥用水分調整副資材の購入時における泌乳牛群からの尿量の推定に利用できる。
  • 泌乳牛の尿量を低減するための栄養管理の指標として利用できる。
  • 本推定式の適用は適温環境下の飼養条件を前提とする。
  • 高塩分飼料給与時や牛が鉱塩を遊び舐めするような時の尿量には、この推定式が当てはまらない場合がある。

具体的データ

データセットの概要

尿量の回帰式

(2)式による推定尿量と実測尿量の関係

その他

  • 研究課題名:家畜排せつ物の効率的処理・活用のための飼養管理システム及び資源化促進技術の総合的検証と新たな要素技術の開発
  • 中課題整理番号:214t
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:大谷文博、甘利雅拡、田鎖直澄、久米新一(京大農)