濃厚洗米排水は養豚用リキッド飼料原料として利用できる

要約

米1kgあたり0.15Lの水しか必要としない超節水型洗米機を用いる無洗米製造工程から排出される濃厚洗米排水に、ギ酸を0.6%添加すると保存性が改善される。乾物あたりの可消化養分総量(TDN)は97.2%と高く、養豚用リキッド飼料原料として利用できる。

  • キーワード:濃厚洗米排水、保存性改善、栄養成分、リキッドフィーディング
  • 担当:畜産草地研・機能性飼料研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

平成22年3月に策定された農業・農村基本計画では、平成32年度までに飼料自給率を38%に引き上げることが目標とされており、低・未利用の食品残さの飼料化が求められている。洗米工程時には米の固形分の約2%が流失しており,その資源量は約17万トンと推定される。精米工場で超節水型洗米機(米1kgあたり0.15Lの水を使用)を用いて無洗米を製造する際に排出される濃厚洗米排水は、通常の洗米排水(米1kgあたり10から15Lの水を使用)に比べて乾物率が高く、養豚用リキッド飼料原料として利用できる可能性がある。しかし、濃厚洗米排水は常温で放置するとすぐに雑菌が増殖し、変敗してしまう。そこで、濃厚洗米排水の保存法について検討し、消化試験により飼料価値を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 5か所の精米工場から回収した濃厚洗米排水の乾物率の平均は7.2%であり、通常の洗米排水の0.3%と比べて高い。粗蛋白質および粗脂肪含量の平均はそれぞれ16.5%と15.5%である(表1)。
  • 精米工場から回収した濃厚洗米排水400mlに、ギ酸(0.05%~1.5%)およびプロピオン酸(0.17%~2.75%)を加え、25°Cで7日間保存すると、回収時以下の酵母数(104 cfu/g以下)を維持するためにはギ酸0.6%、プロピオン酸1.5%の添加が必要である(図1)。コスト面を考慮すると、ギ酸の添加が有効である。
  • 体重約25kgのLWD交雑種去勢雄6頭を用いて、クロスオーバー法による消化試験(2期)を行う。1期目は3頭のブタに、トウモロコシ、マイロ、大豆粕を主体とする基礎飼料に乾物率が20%となるように加水した飼料を給与し、残りのブタに基礎飼料12.5%に対してギ酸0.6%を添加した濃厚洗米排水87.5%を混合した飼料を給与する。2期目は給与飼料を反転する。消化試験から算出した基礎飼料の消化率が、濃厚洗米排水を配合した飼料中でも変わらないものとして、濃厚洗米排水の各成分消化率およびTDNを算出する。濃厚洗米排水の粗蛋白質、粗脂肪の消化率およびTDN(乾物換算で97.2%)は高く、養豚用リキッド飼料原料として利用できると考えられる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 精米工場のほか、大規模に洗米を行っている事業所(炊飯工場、酒造メーカー等)で活用できる成果である。
  • ギ酸添加量の上限は飼料安全法で0.5%と定められているため、飼料給与時は他の飼料と混合後の飼料全体のギ酸濃度が0.5%を上回らないよう留意する必要がある。
  • ギ酸添加コストは濃厚洗米排水1kgあたり2.5円であり、コスト的に見合わない場合にはギ酸添加量を減らすための検討が必要である。
  • 物流コスト削減のためには、乾物率をさらに高めるための検討が必要である。
  • 濃厚洗米排水を給与した場合の肥育成績については現在試験を実施中である。

具体的データ

表1.5 か所の精米工場から回収した濃厚洗米排水の成分値

 

有機酸添加による濃厚洗米排水中酵母の増殖抑制効果

 

表2.濃厚洗米排水の消化率

その他

  • 研究課題名:食品残さや農産副産物等の利用拡大と健康な家畜生産のための飼料調製、利用技術の開発
  • 中課題整理番号:212i
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:大森英之、立川健治(食協株式会社)、田島清、井尻哲(食協株式会社)、川島知之
  • 発表論文等:立川ら(2011)日本養豚学会誌、(印刷中)