ペレニアルライグラス主体放牧草の栄養成分および蛋白質利用特性の季節変化

要約

ペレニアルライグラス主体混播放牧草の乾物消化率およびTDN含量は春に高く夏にやや低下するが、従来飼料設計に用いられている生育期別生草の値より高く季節変化も小さい。一方CP含量の増加に伴いCP摂取量が増加しても体への蓄積量は2割程度である。

  • キーワード:ペレニアルライグラス、放牧草、可消化養分総量、蛋白質利用特性、栄養管理
  • 担当:畜産草地研・放牧管理研究チーム
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

府県における搾乳牛放牧では、牛の養分要求量を放牧草のみで満たすことは難しい一方で、放牧草には粗蛋白質(CP)が多く含まれるため、CP摂取が過剰となる。そのため、放牧草養分量の不足分を満たすとともに、CPの利用効率を高めるために、補助飼料の適正な給与方法を明らかにする必要がある。季節に応じた補助飼料給与量の設計のためには、まず放牧草の栄養価やその利用特性を明らかにする必要がある。そこで、集約放牧で用いられる主要牧草であるペレニアルライグラス主体混播放牧地における放牧草の可消化養分総量(TDN)をはじめとする栄養価、およびCPの利用特性の季節変化を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 放牧期間中に、北関東地域におけるペレニアルライグラス主体シロクローバ混播放牧草地の一部から、放牧牛の採食部位を想定して葉部割合が高くなるよう地上約15cmより刈り取る。これを「放牧草」として化学成分およびTDN含量を測定する。さらに、4、7、10月の放牧草については、ルーメンにおける蛋白質分解特性および窒素出納を測定する。
  • 放牧草のCP含量は季節の進行に伴い25.5% DMまで増加し、これに伴い溶解性蛋白質(CPs)含量の摂取量も増加する。中性デタージェント繊維(NDF)および酸性デタージェント繊維(ADF)含量はそれぞれ36.1-50.4% DMおよび23.1-30.5% DMの範囲で推移し、ともに6-8月に高い値を示す(表1)。
  • 放牧草の乾物(DM)消化率は73.4-81.6%の範囲で推移し、4-6月に高く7-8月に低下する。CP消化率は季節を通して80%程度で大きな変化はなく、NDF消化率は季節の進行に伴い低下する。TDN含量は4-5月に高く、7月に低下し、9-10月にやや回復する。TDN/CPは2.9-4.1の低い値の範囲で推移し、CPに対しTDNの不足が示唆される(表2)。
  • 放牧草中CPは季節の違いに関わらずルーメン内で急速に分解され、24時間後に90%以上分解される(図1)。
  • 放牧草より摂取した窒素のうち、体へ蓄積される割合はおよそ2割であり、約6割が尿中へ、2割が糞中へ排出される。また放牧草中のCP含量の増加に伴い窒素摂取量は増加するものの、体への蓄積量はわずかに増えるのみである(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は放牧牛の採食草を反映した牧草の成分含量および消化率の実測値として日本標準飼料成分表(2009年版)別表(2a)に掲載されており、放牧牛の補助飼料設計に活用できる。
  • 実際の放牧においては、草地の状態や牛の選択的採食、放牧時間により変動することが予想される。

具体的データ

放牧草の飼料成分含量の季節変化

 

放牧草の消化率およびTDN 含量の季節変化

 

放牧草CP のルーメン内分解特性.放牧草からの窒素摂取量に 対する蓄積・排出量

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な放牧飼養のための放牧技術の開発
  • 中課題整理番号:212d.6
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:中野美和、栂村恭子、的場和弘
  • 発表論文等:農研機構(2009)日本標準飼料成分表p204-205.