白色レグホーン種の卵殻質改良に有効な遺伝子および遺伝子型

要約

卵殻質改良に有効な遺伝子としてオボカリキシン32遺伝子を見出した。同遺伝子の特定のハプロタイプには、卵殻質の改善と卵を大きくする効果がある。

  • キーワード:ニワトリ、白色レグホーン、卵殻質、オボカリキシン32遺伝子、QTL
  • 担当:畜産草地研・家畜育種増殖研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

破卵は殻付き鶏卵としての商品価値をなくすため、養鶏業界では最も大きな経済的損失をもたらしている。破卵の発生を抑制するためには、卵殻質の遺伝的な改良が必要である。当該形質を担う遺伝子を特定し、形質に及ぼす遺伝子型の効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 畜草研は、卵用鶏の主流品種である白色レグホーン種の1つの系統を、非破壊変形を指標として強弱両方向に選抜した、強卵殻系統と弱卵殻系統を維持している。本成果は両系統を親世代とする、孫(F2)世代までの交雑家系を造成し、量的形質遺伝子座(QTL)解析を行った結果に基づくものである。
  • 卵重、長径、短径、卵殻重のQTLは、9番染色体の遠位端に存在する(図1)。同領域には、卵殻のマトリックスタンパク質の一つであるオボカリキシン32(ovocalyxin-32)をコードする遺伝子が存在する。
  • F2交雑家系のオボカリキシン32遺伝子には、3つのハプロタイプ(W=Weak;  M= Mediative; S=Strong)が存在する(DDBJのアクセション番号は、W=AB520630; M= AB520631; S=AB520632)。
  • F2個体において、Sハプロタイプは、Wハプロタイプと比較して、卵の大きさに関わる形質(卵重、短径、長径)と非破壊変形を改善する効果がある(表1)。また、Mハプロタイプは、WおよびSハプロタイプと比較して、非破壊変形を改善する効果がある(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、白色レグホーン種には有効であると思われる。しかしながら、その他の品種・系統では、複数のハプロタイプの存在や卵殻質に対する効果は不明であり、個別の検討を要する。

具体的データ

第9 番染色体における量的形質遺伝子座(QTL) 解析結果

 

 

オボカリキシン32 遺伝子のハプロタイプと卵殻形質の関連性

その他

  • 研究課題名:家畜生産性向上のための育種技術及び家畜増殖技術の開発
  • 中課題整理番号:
  • 予算区分:基盤、科研費
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:高橋秀彰、佐々木修、韮澤圭二郎、古川力
  • 発表論文等:
    1)Takahashi,H. et al. (2009) Anim. Genet. 40: 779-782.
    2)Takahashi, H. et al. (2010) Anim. Genet. 41: 541-544.
    3)Yang, D. et al., (2010) Agri. Sci. Chn. 9: 593-597.