牛肉において「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」は異なる食感として認知される

要約

牛肉の客観的な食感評価において、コレスポンデンス分析で「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」に属する語が分かれる。牛肉食感を科学的に定義付けされた「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」を分けて評価することで、客観的に特徴づけられる。

  • キーワード:牛肉、食感、用語、ISO
  • 担当:畜産草地研・畜産物品質研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

国内における消費促進や国際競争力強化という立場から、国産牛肉の「おいしさ」を客観的に評価し、改善する技術が求められている。牛肉の「おいし さ」において重要な要素に「やわらかさ」があるが、この「やわらかさ」という語には科学的な定義が与えられておらず、このため客観的な評価項目としては問 題がある。そこで、官能評価用語の国際規格であるISO5492:1992において科学的に定義付けされた食感表現用語を用い、牛肉の食感を客観的に評価 し特徴づける方法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 本成果は、加熱温度を変えることで異なる食感になるよう調理した牛肉サンプルについて、訓練されたパネリストを用いた官能評価を行った結果に基づくものである。
  • 4種類の温度で加熱した牛肉サンプルの食感について当てはまる語を、表1に示す用語から無制限に選択させ、筋肉部位および加熱温度と用語でコレスポンデンス分析すると、「水分」「変形しやすさ」に属する語と、「かみ切りやすさ」に属す語が分かれる(図1)。
  • 加熱調理温度の上昇に伴い、「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」は異なる変化をするとともに、変化の傾向は筋肉部位によって異なる(図1)。
  • 牛肉食感の評価に際しては、科学的に定義づけられた「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」を分けて評価することで、客観的に特徴づけられる。

成果の活用面・留意点

  • 用語集より当てはまる語を無制限に選択させ、コレスポンデンス分析する手法は、官能特性を特徴づける用語の選択手法として活用できる。
  • ISO5492:1992における食感表現用語は定性的な食感の特徴付けに適しているが、定量的な評価を行う場合は別の基準を用いる必要がある。
  • 複数の筋肉部位に関する評価データを同時に解析することで、筋肉部位間の加熱変化の違いを見いだすことができる。
  • 牛肉の食感におよぼす調理温度以外の要因と「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」の関係については別途検討する必要がある。
  • ISO5492:1992の日本語訳版は、太田泰弘「テクスチャー感覚の表現」(日本官能評価学会誌第4巻1号、21-27ページ、2000年)を参照のこと。

具体的データ

評価に用いた用語群

 

 

牛肉の食感における「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」およびその調理変 化に関する概念図

その他

  • 研究課題名:乳肉の美味しさ等の品質に影響を与える因子の解明と新たな評価法の開発
  • 中課題整理番号:311h.1
  • 予算区分:委託プロ(えさプロ)、基盤、科研費
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:佐々木啓介、本山三知代、安田潤平(岩手畜研)、山本禎(神奈川畜技セ)、大江美香、成田卓美、今成麻衣、藤村忍(新潟大)、三津本充
  • 発表論文等:1) Sasaki K. et al. (2010) Meat Sci. 86: 422-429