林内放牧牛が食べる木本類は抗酸化能が高く、血漿中抗酸化能が向上する

要約

林内放牧牛によって採食される木本類の多くはイネ科草類より抗酸化能が高い。また、木本類の採食頻度が増加する放牧2ヵ月目以降の夏季から秋季にかけて、林内放牧牛の血漿中抗酸化能が向上し、草地放牧牛と比べても高くなる。

  • キーワード:林内放牧、木本類、抗酸化能、放牧牛
  • 担当:畜産草地研・放牧管理研究チーム、草地多面的機能研究チーム、資源循環・溶脱低減研究草地サブチーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

飼料自給率の向上や、畜産農家の軽労化を図る一つの方策として、人工草地や耕作放棄地と林地を組み合わせた複合的な放牧利用が注目されている。その中で林内放牧の特徴として、牛が多種の木本類を採食することが挙げられる。しかし、この採食特性を伴う林内放牧が牛の健全性に与える影響について科学的な知見は乏しく、この点を明らかにすることは、より効果的な林地活用技術の開発に資する。そこで本課題では、食品の機能性や生体の健全性の評価指標である抗酸化能に着目し、林内放牧牛により採食される主要な木本類の特性及び放牧牛の健全性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 本放牧試験では、林内放牧区及び草地放牧区を設定し、黒毛和種雌牛を各4頭供試する。林内放牧区は野草地やシバ等のイネ科草類主体草地がモザイク状に存在する雑木林放牧地4haを、草地放牧区は同地域内のオーチャードグラス、トールフェスク、レッドトップ、リードカナリーグラスのイネ科草類主体草地1haを用いる。放牧期間は4月末~9月末である。
  • 林内放牧区において採食される主要な木本類の中にはイネ科草類と比較して、抗酸化能が高い植物種が多数存在する(図1)。
  • 林内放牧区では放牧2ヵ月目以降の夏季から秋季にかけて、イネ科草類の採食割合が減少し、木本類の採食割合が増加する(図2)。
  • 放牧牛の血漿中抗酸化能は林内放牧区のみにおいて、放牧2ヵ月目以降の夏季から秋季にかけて向上し、放牧4ヵ月目(9月)には林内放牧区が草地放牧区と比較して有意に高い値を示す(p < 0.01)(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 林地の放牧活用技術及び抗酸化能強化による家畜の健全な飼養技術の開発に向けた基礎データとして活用できる。
  • 本成績はエネルギー要求量の低い肉用繁殖牛を想定している。

具体的データ

主要な採食植物種類別の抗酸化能

 

林内放牧区における採食植物割合の推移

 

放牧牛の血漿中抗酸化能の推移

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 中課題整理番号:212d.6
  • 予算区分:基盤、高度化
  • 研究期間:2003~2010年度
  • 研究担当者:芳賀聡、石崎宏、中野美和、山地佳代子、中尾誠司、平野清、山本嘉人、北川美弥、佐々木寛幸、仮屋喜弘