飼料用稲跡の飼料用ムギ混播栽培では耕起と整地を省略できる

要約

飼料用稲収穫跡の飼料用ムギ混播栽培において、堆肥散布、肥料散布後の耕起と整地を省略する簡易播種法で、慣行法にくらべ播種関連作業時間の35%を低減できる。簡易播種法の収量は慣行法と同等である。

  • キーワード:簡易播種法、飼料用ムギ、作業時間、収量
  • 担当:自給飼料生産・利用・耕畜連携飼料生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・飼料作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

畜産農家が粗飼料を生産するとき、家畜飼養に労力を割かれ、飼料生産に十分な労力を振り向けることができない。とくに、秋季は、飼料用稲の収穫作業と飼料用ムギの播種作業の時期が重複するために多労になる。

そこで、飼料用稲収穫跡に飼料用ムギを混播で散播するとき、堆肥散布と施肥後の耕起と整地を省略して播種作業労力を緩和する簡易播種法を実証した。

成果の内容・特徴

  • 畜産農家が「飼料用稲+飼料用ムギ」体系を導入する場合、ムギを散播で混播栽培するときに適した播種技術であり、ドリルシーダーのようなムギ用播種機を必要としない。
  • 飼料用稲収穫跡に、堆肥と化学肥料を散布した後に、飼料用ムギ(オオムギとライコムギ混播)を播種する。その後、深さ5cmで圃場を浅耕し鎮圧する。堆肥散布後および化学肥料散布後には耕起しない(簡易播種法)(図1下段)。
  • 堆肥散布、肥料散布後に耕起しないことで、播種に関連する作業時間が約35%低減できる(表1)。
  • オオムギとライコムギの合計乾物収量は600kg/10a以上であり、簡易播種法の収量は 慣行法と同等以上である(図2)。
  • 堆肥と肥料散布の後に、耕起と整地をしないので、作業時間が短縮できるだけでなく、降雨による播種作業の遅延が少ない。

成果の活用面・留意点

  • オオムギ品種「ムサシボウ」とライコムギ品種「ライコッコΙΙ」を混播したときのデータである。他の草種・品種を利用したときの結果は異なることがある。
  • 排水が良好な水田で行った試験の結果であり、飼料用稲を収穫した後に圃場の土壌水分が高く維持されることが多い湿田では、排水対策を講じる必要がある。
  • 土壌水分の違いにより、飼料用ムギ類の草種を選択する必要がある。

具体的データ

図1 簡易播種法の概略
表1 簡易播種法の作業時間図2 簡易播種法によるおおむぎ・らいむぎ混播栽培の収量

(佐藤節郎)

その他

  • 中課題名:耕畜連携による水田の周年飼料生産利用体系の開発
  • 中課題番号:120c3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2011年度
  • 研究担当者:佐藤節郎、脇阪浩(塩谷南那須農業振興事務所)
  • 発表論文等:佐藤(2012)日草誌、58(1) 印刷中