わが国における体細胞クローン豚およびその後代豚の生産と生死

要約

国内調査を行った結果、体細胞クローン豚(90頭)における死産、生後直死および病死の発生割合は、それぞれ、24.4、8.9および27.8%である。一方、後代豚(145頭)における死産、生後直死および病死の発生割合は、それぞれ、5.6、1.4および11.9%である。

  • キーワード:豚、体細胞クローン豚、後代豚、死産、生後直死、病死
  • 担当:家畜生産・有用家畜作出
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜育種繁殖研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

わが国における体細胞クローン豚の生産状況は、農林水産省によりプレスリリースされているが、後代豚の生産に関するデータは公表されていない。そこで、2007年7月に畜産草地研究所が実施した調査(体細胞クローン豚:90頭、後代豚:145頭、生産期間:2002-2006年)に基づき、わが国における体細胞クローン豚(遺伝子組換え豚を除く)およびその後代豚の生産と生死の状況を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 体細胞クローン豚および後代豚の主な品種は、それぞれ、交雑種(81.1% (73/90))および金華豚(75.2% (109/145))である(図1)。体細胞クローン豚の作出に用いられているドナー細胞には、脂肪細胞(45.6% (41/90))や唾液腺細胞(31.1% (28/90))が多い(図2)。
  • 体細胞クローン豚における死産および生後直死の発生割合は、それぞれ、24.4% (22/90)および8.9%(8/90)である(図3)。分娩形態は、97.8%(88/90)が誘起分娩による経腟分娩で、残りの2.2 % (2/90)は自然分娩である。なお、体細胞クローン豚の病死(衰弱死を含む)の発生割合は、27.8% (25/90)である。
  • 体細胞クローン豚(交雑種)の死亡した新生子においては、過大子の傾向は認められない(表1)。無事に出生した体細胞クローン豚(金華豚)の雌雄合算した生時体重(915.9±207.4g (n=11))は、一般豚のもの(763.5±150.3 g (n=33))よりも重い傾向が認められる。
  • 出生した後代豚における死産および生後直死の発生割合は、それぞれ、5.6% (8/143)および1.4% (2/143)である(図3)。後代豚は、全てが自然分娩で生産されている。なお、後代豚における病死の発生割合は、11.9% (17/143)である。
  • 後代豚(金華豚)の死亡した新生子においても過大子の傾向は認められない(表1)。無事に出生した後代豚(金華豚)の雌雄合算した生時体重(725.2±139.8g (n=103))は、一般の金華豚(763.5±150.3g (n=33))と同等である。この際、一腹産子数は、後代豚および一般豚で、それぞれ、10.9±3.1 (n=10)および8.3±1.9g (n=4)である。

成果の活用面・留意点

  • 体細胞クローン豚およびその後代豚の生産や飼養の状況を把握するための資料となる。
  • 特に断りがない限り、遺伝的な父母の両方、あるいはそのいずれかが体細胞クローンである豚(体細胞クローン豚の産子)を「後代豚」と表記している。また、自然交配や人工授精などで生産された豚を「一般豚」と表記している。
  • 今回の調査では、生産される体細胞クローン豚の多くが遺伝子組換え豚であり、農林水産省のプレスリリースによる頭数(256頭、2007年3月現在)の35.2%(90頭)のデータを収集している。また、調査時点の生産機関の50.0%(3/6)より協力を得ている。

具体的データ

図1 体細胞クローン豚およびその後代豚の品種図3 体細胞クローン豚およびその後代豚の生死
図2 体細胞クローン豚の作出に用いられているドナー細胞(n=90)
表1 体細胞クローン豚および後代豚における出生時の状態と生時体重(雌雄合算)

(渡辺伸也)

その他

  • 中課題名:生殖工学を用いた有用家畜作出技術の開発
  • 中課題番号:130c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:渡辺伸也、赤木悟史、原口清輝、金田正弘、ソムファイ タマス
  • 発表論文等:Watanabe S. (2011) 畜産草地研究所研究資料、12:1-44