木材由来セロオリゴ糖は乳用育成子牛の発育を向上させる

要約

未利用飼料資源の有効利用を目指し、木材由来セロオリゴ糖(CB)の機能性を活用した給与効果を明らかにした。離乳後の乳用育成子牛に日量5gのCBを給与すると日増体量および飼料効率が向上することから、CBは乳用育成子牛の飼料資源として有効である。

  • キーワード:セロオリゴ糖、乳用育成子牛、発育向上、機能性飼料、未利用資源
  • 担当:家畜生産・代謝制御
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

乳用子牛の育成技術において、離乳後の給与飼料は順調な発育を目指す上で重要な要因である。一般に、固形飼料を人工乳からトウモロコシを多く含む子牛用配合飼料に切り替えて給与する時期であるが、高増体を目指して配合飼料の多給に頼る管理になりやすい。離乳後の育成期における理想的な飼料管理は、粗飼料を充分に給与して採食量を確保しながら目標とする日増体量(DG)に制御することが推奨されている。しかしながら、最近の輸入飼料価格の高騰および不安定化により、利益に直結しない育成期の栄養管理は重要視されない傾向も散見される。

本研究では、国内での未利用飼料資源の有効利用を目指して木材由来のセロオリゴ糖(CB)に着目した。CBは大腸を中心とした消化管内で腸内細菌に分解・利用される過程において揮発性脂肪酸を産生することから、発育向上や代謝・内分泌機能の亢進が期待できる。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン種雌子牛を6週齢から離乳開始して、7週齢で完全離乳する。
  • 子牛用スターターは日量2,400gを上限に飽食させ、チモシー乾草も切断して飽食させる。両者の成分は表1に示すとおりである。CBは日量5gを子牛用配合飼料に振りかけて給与し、馴致期間として離乳時(5~7週齢)は哺乳に混和して給与する(図1)。
  • 7~13週齢においてCBを給与した子牛は、無給与の子牛に比べて13週齢時の体重および期間DGが向上する(表2)。また、飼料効率もCB給与により高まる。
  • CB給与により、体構成の発達に関与するホルモンであるインスリン様成長因子-1(IGF-1)濃度が高まる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 木材由来CBが離乳後の乳用育成子牛への有効な飼料資源であることを示す知見である。
  • 使用したCBは市販品であることから、人工乳およびスターターに混和して商品化するための有用な情報である。
  • 哺乳期および育成後期での給与効果については未確認である。

具体的データ

図1.木材由来のセロオリゴ糖表1.配合飼料およびチモシー乾草の成分
表2.乳用育成子牛の飼養成績
図2.乳用育成子牛の血漿中IGF-1 濃度の変化

(櫛引史郎)

その他

  • 中課題名:家畜の生産効率と健全性の安定的両立を可能にする飼養管理技術の開発
  • 中課題番号:130d0
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:櫛引史郎、蓮沼俊哉、川嶋賢二、脇本 亘、秋山 清、野田正人、永島茂男
  • 発表論文等:Hasunuma, T., et al. (2011) Anim Sci J. 82: 543-548.