ブロムクロロメタン製剤は消化率を落とすことなく、反すう家畜のメタン抑制ができる

要約

ブロムクロロメタンを8%含有するシクロデキストリン製剤(BCM-CD)を飼料に添加することで、消化率を落とすことなく山羊のメタンを大幅に減少することができる。

  • キーワード:メタン、ブロムクロロメタン、山羊、消化率
  • 担当:気候変動対応・畜産温暖化適応
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

家畜の消化管内発酵に由来するメタンは、農業分野から排出されるメタンの約46%を占める主要な排出源である。そのため、消化管内発酵由来のメタンの効果的な抑制技術を開発する必要があるが、併せて飼料の消化率低下による生産性への影響が生じないようにすることが不可欠である。ブロムクロロメタン(BCM)は最も効果的なメタン抑制効果を有することが知られているが、揮発性であることからそのまま飼料に添加することができない。そのため、シクロデキストリン(CD)を用いてメタン抑制剤を包接して利用する方法が考案されている。そこで、本研究では、BCMを8%含有するシクロデキストリン製剤(BCM-CD)を調製し、山羊(シバヤギ)の飼料に添加して消化率およびメタン抑制効果を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 育成牛用配合飼料とチモシー乾草を乾物比で1:1に混合したものを給与飼料(乾物当たりの粗蛋白質含量11.8%、中性デタージェント繊維含量48.6%、エネルギー16.4MJ/kg)とした。山羊3頭(平均体重35.7kg)にTDN維持要求量の約1.1倍を給与(対照区飼料)するとともに、対照区飼料にBCM-CDを体重100kg当たり0.5g添加したものを試験区飼料とした。一元配置法に従い全糞採取法による消化試験を行なうとともに、本試験期間中、山羊を開放式呼吸試験装置に収容しメタン産生量を測定した。
  • 対照区と試験区の飼料摂取量には違いはなく、BCM-CD添加による飼料摂取量への影響は認められない。
  • 図1に示すとおり、対照区と試験区の乾物、有機物、粗蛋白質、中性デタージェント繊維およびエネルギーの消化率に有意な差は認められない。
  • 図2に示すとおり、試験区では1日当たり、乾物摂取1kg当たりおよび中性デタージェント繊維1kg当たりのメタン産生量が対照区のほぼ7%まで大幅に減少する。
  • 以上の結果から、飼料へのBCM-CD製剤の添加により、消化率を落とすことなく、山羊のメタンを大幅に抑制できる。

成果の活用面・留意点

  • 反すう家畜の消化率を落とすことなく、メタンを大幅に抑制可能な製剤の開発ならびに抑制メカニズムの解明のための基礎的知見として活用できる。
  • ブロムクロロメタンは飼料添加剤として承認されていない。
  • 山羊の試験結果であり、乳牛や肉用牛での添加効果については別途検討が必要である。

具体的データ

図1 BCM-CD添加飼料の山羊の消化率
図2 BCM-CD添加が山羊のメタン産生量に及ぼす影響

(永西 修、三森眞琴、樋口浩二、小林洋介、真貝拓三)

その他

  • 中課題名:畜産由来の温室効果ガス制御技術の高度化と家畜生産の温暖化適応技術の開発
  • 中課題番号:210c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2011年度
  • 研究担当者:永西 修、三森眞琴、樋口浩二、小林洋介、真貝拓三
  • 発表論文等:Mitsumori M. et al. (2011) Br. J. Nutr. 8:1-10