ラクトコッカス属乳酸菌体の修飾によるインターロイキン12誘導能の増強法

要約

ラクトコッカス属乳酸菌を卵白リゾチームと共に加熱することにより、乳酸菌細胞表層に卵白リゾチームが凝集し、乳酸菌の有するインターロイキン12誘導能を増強することができる。

  • キーワード:ラクトコッカス属乳酸菌、卵白リゾチーム、インターロイキン12
  • 担当:食品機能性・生体防御利用技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・畜産物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

花粉症などのアレルギー性疾患が急増し社会的な問題となって久しいが、近年、乳酸菌にアレルギー反応を軽減する働きがあることが明らかになってきている。その作用メカニズムの一つとして、乳酸菌がマクロファージ細胞等のインターロイキン12産生を誘導することによるI型ヘルパーT細胞の活性化が挙げられている。そこで、より抗アレルギー活性の強い乳酸菌食品素材を作製するために、乳酸菌のもつインターロイキン12誘導能を増強する方法を提供する。

成果の内容・特徴

  • ラクトコッカス属乳酸菌を30℃、48時間、ラクトースをグルコースに置換したM17培地(GM17培地)で培養する。620nmの濁度(OD620)が1となるように乳酸菌体を1mg/ml卵白リゾチーム/生理食塩水に懸濁し、100℃、50分間加熱すると乳酸菌細胞表層に卵白リゾチームが凝集した菌体が得られる(図1)。
  • マウス脾臓細胞に対する乳酸菌体のインターロイキン12誘導能は、菌体を卵白リゾチームで修飾することにより増強される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 卵白リゾチーム修飾菌体は死菌体であり、サプリメントとしては利用可能であるが、ヨーグルト製造等の発酵には利用できない。
  • アレルギーモデルマウスやアレルギー患者に対する卵白リゾチーム修飾乳酸菌の抗アレルギー効果は未解析である。
  • 鶏卵アレルギー患者は、修飾乳酸菌の表層に凝集している卵白リゾチームに対してアレルギー反応を示す可能性がある。

具体的データ

図1.菌体修飾方法と卵白リゾチーム修飾菌体の蛍光顕微鏡観察図
図2.マウス脾臓細胞のインターロイキン12生産

(青木玲二、水町功子)

その他

  • 中課題名:生体防御作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の解明
  • 中課題番号:310c0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(信頼機能)
  • 研究期間:2006~2011年度
  • 研究担当者:青木玲二、鈴木チセ、木元広実、野村将、水町功子
  • 発表論文等:Aoki R. et al. (2011) J. Dairy. Sci. 94(7):3262-3270