シバ草地の生存部草量を評価するための分光植生指標

要約

485nmと770nmの群落分光反射率の比を利用した分光植生指標は、枯死部を多く含むシバ放牧草地の植物群落中の生存部草量を、年間を通して評価できる。

  • キーワード:季節動態、シバ草地、植生指標、生存部草量、分光特性
  • 担当:基盤的地域資源管理・農用地保全管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・草地管理研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

放牧草地における家畜に被食される植物のうち、生存部は枯死部より栄養価で優れる。生存部植物量を把握することは放牧管理において重要であるが、シバ放牧草地では枯死した植物が多く混在しており、生存部量の測定は容易ではない。本研究では、シバ草地において生存部草量のレベル毎の群落分光特性の形を示し、群落分光特性に基づく草地の生存部草量評価のための分光植生指標を開発する。

成果の内容・特徴

  • シバ草地植物群落の400-1050nmの範囲のスペクトル特性は生存部量のレベルにより異なり、生存部量と各波長帯の分光反射率との関係の強さを表す相関比は、可視域では485nm、近赤外域では770nmにピークを示す(図1)。
  • 草地植物群落の770nmと485nmの分光反射率の比をとった分光植生指標(R770/R485)を新たに提案する。この指標は、シバ草地の生存部草量と線形の高い相関性を示し(図2a)、本指標を利用した線形回帰モデルは生存部草量を高い精度で推定できる(図2b)。検証用サンプルを用いたR770/R485の推定精度(r = 0.83, standard error of prediction: SEP = 39.5)は、既存の植生指標の推定精度(NDVI r = 0.76, SEP = 48.1; DVI r = 0.68, SEP = 57.8; RVI r = 0.79, SEP = 43.3; SAVI r = 0.73, SEP = 51.6)より高い。
  • R770/R485を使った線形回帰モデルによる予測値は、シバ草地の枯死部量の影響を受けずに生存部草量の実測値の季節変化を再現する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • シバ草地における放牧管理のための飼料現有量を把握するための有用な測定技術として活用できる。
  • 本植生指標はシバ草地において試験、検証されたものであり、シバ草地以外での生存部草量の評価指標として利用するには当該草地における検証試験が必要である。

具体的データ

図1.異なる生存部草量水準のスペクトル特性
図2. R770/R485の生存部草量との関係(a)と生存部草量推定精度 (b)
図3.分光植生指標R770/R485を利用した生存部量の季節モニタリング

(板野志郎)

その他

  • 中課題名:農用地の生産機能の強化技術および保全管理技術の開発
  • 中課題番号:420b0
  • 予算区分:環境省環境技術開発推進事業
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:板野志郎、冨松元(国環研)
  • 発表論文等:Itano S, Tomimatsu H (2011) Grassland Science 57:9-17.