ソルゴー型ソルガム品種「SIL-05」は多窒素条件下でも硝酸態窒素を蓄積しにくい

要約

ソルゴー型ソルガム品種「SIL-05」は、窒素多量施用条件下で栽培しても、反芻家畜の硝酸塩中毒のための飼料中硝酸態窒素濃度のガイドライン(乾物あたり0.2%)を超えにくい。この品種は出穂時の硝酸態窒素濃度が低く、収穫期にも低く維持される特性をもつ。

  • キーワード:ソルゴー型ソルガム、硝酸態窒素、硝酸塩中毒
  • 担当:自給飼料生産・利用・大規模飼料生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・飼料作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ソルゴー型ソルガム品種は、窒素を多量施用した条件において、硝酸態窒素濃度が飼料用トウモロコシや子実・兼用型ソルガム品種に比べて高くなりやすく、硝酸塩中毒回避のための飼料中硝酸態窒素濃度のガイドラインである乾物あたり0.2%を超えやすいことが知られている。そこで、ソルゴー型ソルガム品種について硝酸態窒素低減技術として、硝酸態窒素を蓄積しにくい品種を明らかにするとともに、硝酸態窒素蓄積特性を解析する。

成果の内容・特徴

  • ソルガム品種の硝酸態窒素濃度は、収穫時まで土壌の硝酸態窒素含量が高く維持される気象条件となった2009年に高い。「SIL-05」の硝酸態窒素濃度は、このような条件においてもガイドライン値の乾物あたり0.2%を超えないことから、「SIL-05」は硝酸態窒素を蓄積しにくいソルゴー型ソルガム品種といえる(図1)。
  • 「SIL-05」の硝酸態窒素濃度は、対照品種「FS501」に比べて、出穂以前に低く、その後、生育ステージが進んでも濃度差が維持されたまま推移する(図2)。これは、硝酸態窒素濃度が低かった2010年においても同様の傾向である。つまり、「SIL-05」の収穫時(糊熟期)の硝酸態窒素濃度が低いのは、出穂までの硝酸態窒素濃度が低いことが関係する。
  • 出穂以前の「SIL-05」の窒素吸収量は、「FS501」と比べて少ないが、出穂以降は「FS501」と遜色がなく、やや優る傾向にある(図3)。これを反映して、出穂以前の「SIL-05」の乾物生産量は、「FS501」と比べて有意に低いが、出穂以降の生育は旺盛で、収穫期には同等となる(図4)。
  • 以上のことから、「SIL-05」は、出穂期頃までの窒素吸収が少なく、硝酸態窒素を蓄積する能力も低いが、出穂期以降は「FS501」と同等以上の窒素吸収と生育を示す。そのため、出穂までの硝酸態窒素濃度の差が収穫期に反映されて、硝酸態窒素濃度が高くなりにくい特性をもつと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 「SIL-05」は試験を実施した2か年ともに、出穂期以降の降雨による著しい倒伏が見られた。
  • 「SIL-05」は糖生産力にすぐれる品種として開発されており、茎割合が高いために、窒素濃度が低く、粗蛋白含量が低い特徴がある。
  • 対照品種とした「FS501」は、草型の変異が大きく、晩生タイプの多いソルゴー型ソルガム品種群において、糖蓄積、熟期、草型、収量性が「SIL-05」に近い品種である。
  • 「SIL-05」種子の入手については、九州沖縄農業研究センターに問い合わせる。

具体的データ

 図1~4

その他

  • 中課題名:大規模作付けに適した飼料作物の省力的安定多収栽培技術の開発
  • 中課題番号:120c1
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2012年度
  • 研究担当者:原田久富美、須永義人、川地太兵
  • 発表論文等:原田ら (2013)日草誌59,21-28