ブタにおける飼料中リジン充足に伴う代償性成長は窒素蓄積の増加を伴う

要約

ブタへリジン不足飼料を給与した後にリジン充足飼料を給与すると代償性成長が誘発される。このとき、体内への窒素の蓄積が高まる。

  • キーワード:飼料中リジン含量、代償性成長、窒素出納、骨格筋タンパク質、IGF-I
  • 担当:家畜生産・第一胃発酵・産肉制御
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

これまでに、代償性成長に関して多くの実験が行われている。それらの実験では、成長を抑制する様々な栄養条件下で飼養したのち、栄養素の充足した飼料を自由摂取させても、代償性成長が確認される場合と、確認されない場合がある。このように再現性の確保が難しいこと、一度に多くの要因が変動することから、代償性成長は詳細なメカニズムの解明に至っていない。代償性成長のメカニズムを解明しその現象の利用が可能になれば、効率的な肉生産につながる。本研究では、飼料中リジン含量が不足した状態から充足した状態へ変化させることによって、ブタに代償性成長を誘発するモデルを作成する。さらに、代償性成長時における体タンパク質の動態を把握するために窒素出納を求める。

成果の内容・特徴

  • ブタ(LWD雑種、6週齢、体重12.0 ± 2.4 kg)にリジン不足飼料(リジン含量0.73%)を給与すると、対照飼料(NRCに準拠、リジン含量1.16%)に比べて増体が低下するが、リジン不足飼料を3週間給与飼後、対照飼料へ切り替えると、飼料中リジン含量の充足により、増体および飼料効率は高くなり、代償性成長を示す。(表1)
  • このとき、リジン不足飼料の給与により血中のインスリン様成長ホルモン(IGF-I)濃度は低くなるが、飼料中リジン含量の増加に伴いIGF-I濃度は増加し対照区と同等程度となる。(図1)
  • リジン不足飼料を給与したブタでは窒素蓄積量が低いが、飼料中のリジンが充足すると体内への窒素の蓄積は高まることから、高い窒素蓄積量が代償性成長の一因であることが示唆された。(図2)

成果の活用面・留意点

  • この成果から、ブタにおいて代償性成長を誘発するモデルが作成できたため、このモデルを用いれば代償性成長に関する詳細な研究が可能。
  • 本実験は、体重12kg程度のブタを用いた実験であり、代償性成長誘発する飼料のリジン含量は、ブタの体重及び日増体量に合わせて設計する必要がある。

具体的データ

 表1,図1~2

その他

  • 中課題名:第一胃内発酵制御因子の解明と栄養制御による産肉特性改善
  • 中課題番号:130e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:石田藍子、中島一喜、勝俣昌也
  • 発表論文等:Ishida A. et al. (2012) Anim. Sci. J. 83: 743-749