カシューナッツ殻液は乾乳牛のメタンを大幅に抑制できる
要約
カシューナッツ殻液を含む製剤を牛の飼料に添加することで、飼料の消化率を低下することなくメタン発生量を約20%抑制することが可能である。
- キーワード:メタン低減、カシューナッツ殻液、消化率
- 担当:畜産温暖化・畜産温暖化適応
- 代表連絡先:電話 029-838-8611
- 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
家畜の消化管内発酵に由来するメタンは、農業分野から排出される温室効果ガス(GHG)の二酸化炭素換算で約46%を占める主要な排出源である。反すうのメタン抑制に関して多くの研究がなされてきたが、農家への技術導入を考えた場合メタン抑制効果を有する物質が天然由来のもので、飼料の消化率低下による生産性への影響が生じないような技術開発が前提となる。カシューナッツ殻液(CNSL)はメタン抑制効果を有することが知られているが、実際に牛を用いてメタン抑制効果や消化率への影響を調べた報告はない。そこで、本研究では、乾乳牛にCNSLを含む飼料を給与し、メタン抑制効果や消化率への影響を明らかにした。
成果の内容・特徴
- ホルスタイン種乾乳牛3頭(548±27kg)の飼料摂取量は、配合飼料とチモシー乾草を6:4の割合で混合した基礎飼料(対照区)と基礎飼料にCNSLを体重100kg当たり4g添加したCNSL添加区に違いはなく、CNSL添加による飼料摂取量への影響は認められない。
- 図1に示すとおり、対照区とCNSL添加区の乾物、中性デタージェント繊維、粗タンパク質およびエネルギーの消化率に有意な差は認められない。
- 図2に示すとおり、CNSL添加区では対照区に比べ乾物摂取1kg当たりメタン発生量が19.3%、可消化乾物摂取1kg当たりのメタン発生量が21.6%大幅に減少する。
- 以上の結果から、飼料へのCNSLの添加により、消化率を落とすことなく乾乳牛のメタンを大幅に減少することができる。
成果の活用面・留意点
- 反すう家畜の消化率を落とすことなく、乾乳牛のメタンを大幅に抑制可能な栄養管理技術として利用できる。
- 泌乳牛のメタン抑制に関するCNSLの給与方法については別途検討が必要である。
具体的データ

その他
- 中課題名:畜産由来の温室効果ガス制御技術の高度化と家畜生産の温暖化適応技術の開発
- 中課題番号:210c0
- 予算区分:実用技術
- 研究期間:2008~2010年度
- 研究担当者:永西 修、真貝拓三、三森眞琴、樋口浩二、小林洋介、竹中昭雄
- 発表論文等:Shinkai et al. (2012) J. Dairy Sci. 95:5308-5316