飼料用稲麦二毛作体系によるホールクロップサイレージの生産技術

要約

水田を活用したダイレクト収穫による飼料用稲麦二毛作体系において、地域に適した品種を用い、乳苗移植栽培や堆肥と液肥を活用した栽培技術、作業競合回避技術等の導入により、年間実乾物収量で1.8t~2.0t/10a以上が確保できる。

  • キーワード:飼料用イネ、飼料用麦類、飼料用稲麦二毛作、技術マニュアル
  • 担当:自給飼料生産利用・耕畜連携飼料生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水田を活用した飼料増産と生産費低減化を図るためには、飼料用イネの裏作に飼料用麦類の導入を検討することが必要である。そのため、地域に適した稲麦二毛作の作型を提示するとともに、迅速な作物の切換え技術や作業競合回避技術等を確立し、年間実乾物収量で二毛作限界地帯である寒冷地では1.6t/10a、温暖地では1.8t/10a以上を確保するための各技術を開発し、ダイレクト収穫体系による飼料用稲麦二毛作技術マニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • 飼料用稲麦二毛作体系を導入するには、各地域に適した飼料用イネとダイレクト収穫が可能なオオムギ(排水不良田ではコムギ)の中から、飼料用として多収が得られる品種を組合わせる(表1)。
  • 南東北地域では、飼料用イネの乳苗育苗の導入によって(図1:左)、育苗期間を10日程度短縮することで作業競合を回避し、実規模の実証試験(2年間)の結果から、年間実乾物収量で1.8t/10a以上を確保することができる(図2)。
  • 関東二毛作地域おいて、飼料用イネには乳牛曝気尿液肥(図1:中)、飼料用オオムギには家畜(乳牛)堆肥を活用した栽培技術を導入することによって、化学肥料を低減し、現地実証試験(2年間)の結果から、年間実乾物収量で2.0t/10a以上を確保することができる(図2)。
  • 東海地域において、ムギ立毛間飼料用イネV溝播種技術(図1:右)を導入することで、飼料用イネの播種期が2月下旬から3月上旬(東海地)の農閑期となり、春季の作業競合を回避でき、現地実証試験(2年間)の結果から、1.8t/10a以上の実乾物収量を確保することができる(図2)。
  • 糊熟期にダイレクト収穫で調製したオオムギおよびコムギWCS(水分70%程度)を主な粗飼料源として、乾物で30%程度混合した発酵TMR(配合飼料や豆腐粕等と混合)の嗜好性は良好で、乳生産や飼養成績に影響はなく、チモシー乾草の代替飼料として利用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:二毛作が可能な地域の農業技術指導者、耕種農家、コントラクター
  • 普及予定地域:二毛作限界地帯から温暖地の二毛作可能地域
    2013年作付面積(実績)は埼玉県60ha、群馬県30ha、三重県30ha。
  • その他:本マニュアルでは、各技術を導入した現地事例として、埼玉県、群馬県、三重県、福岡県における飼料用稲麦二毛作の取組事例を紹介している。 本マニュアルは冊子版として2500部配布するとともに、畜産草地研究所HPからもダウンロードできる。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:耕畜連携による水田の周年飼料生産利用体系の開発
  • 中課題整理番号:120c3
  • 予算区分:交付金、委託プロ(低コスト)
  • 研究期間:2010~2013年度
  • 研究担当者:浦川修司、佐藤節郎、原田久富美、関矢博幸、小荒井晃、中野洋、服部育男、野中和久、星信幸(宮城古川農試)、荒木利幸(宮城畜試)、横澤将美(群馬畜試)、都丸友久(群馬畜試)、佐田竜一(栃木畜酪研)中山幸則(三重農研)、出岡裕哉(三重農研)、川原田直也(三重農研)、川村淳也(三重畜研)、山本泰也(三 重畜研)、柿原孝彦(福岡農総試)、宮川創(福岡農総試)
  • 発表論文等:畜産草地研究所(2013)ダイレクト収穫体系による飼料用稲麦二毛作技術マニュアル