泌乳牛に対する輸入トウモロコシから飼料用玄米への代替給与法

要約

TMR中の穀実混合割合を3割とすれば、飼料用玄米は輸入トウモロコシの代替として泌乳牛に給与できる。

  • キーワード:乳牛飼養、飼料用米、乳生産、泌乳最盛期、発酵TMR
  • 担当:自給飼料生産・利用・国産発酵TMR
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

飼料用玄米は可消化エネルギー含量や化学成分組成がトウモロコシとほぼ同等であり、輸入トウモロコシの代替飼料としての利用が期待されている。しかし飼料用玄米はトウモロコシに比べ、牛第一胃内の分解速度が速い飼料特性を有する。TMR中のデンプン含量あるいは穀実割合が高い場合、乳牛に分解速度がより速い穀実を給与すると生産性が低下することがある。したがってトウモロコシを飼料用玄米に代替して給与すると乳生産に負の影響が出る可能性がある。そこで、穀実混合割合等が異なる複数の飼料設定下においてトウモロコシから飼料用玄米への代替給与が泌乳最盛期牛の乳生産性に及ぼす影響について検討し、適切な代替給与法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • TMR中に蒸気圧ぺんトウモロコシ(SFC)あるいは蒸気圧ぺん玄米(SFR)を乾物ベースで約3割混合した場合、SFCからSFRへ代替給与しても泌乳牛(n=6、分娩後50~100日)の乾物摂取量および乳生産量に影響を及ぼさない(表1、図)。
  • TMR中にSFCあるいはSFRを乾物ベースで約3割混合し、粗飼料源としてデンプン含量の高いイネおよびトウモロコシホールクロップサイレージ(WCS)を混合した場合、SFCからSFRへ代替給与しても泌乳牛(n=9、分娩後30~75日)の乾物摂取量および乳生産量に影響を及ぼさない(表2、図1)。
  • TMR中にSFCあるいはSFRを乾物ベースで4割混合した場合、泌乳牛(n=9、分娩後50~110日)の乾物摂取量および乳生産量はSFR混合割合の増加に伴い有意に(P<0.01)減少する(表3、図1)。
  • 泌乳最盛期の乳牛に対するSFCからSFRへの代替給与が乳生産に及ぼす影響は、TMR中の穀実混合割合に依存される(図1)。泌乳最盛期の乳牛に対し、穀実の混合割合を飼料中に乾物で4割とすると、トウモロコシから飼料用玄米への代替給与は泌乳牛の乾物摂取量や乳生産量を低下させる。しかし穀実混合割合を3割とすれば代替給与による乳生産性の低下は認められず、飼料用玄米は輸入トウモロコシの代替として利用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:行政・普及機関、民間企業、生産者を問わず、乳牛への輸入トウモロコシから飼料用玄米代替給与の指針として活用できる。
  • 普及予定地域等:全国各地。乳牛用配合飼料に使用される輸入トウモロコシ(約135万トン)の代替として活用できる。
  • その他:分娩直後の泌乳牛では別途検討が必要。玄米の加工法は蒸気圧ぺんである。

具体的データ

図,表1~3

その他

  • 中課題名:飼料用米等国産飼料を活用した発酵TMRの安定調製給与技術と広域流通システムの確立
  • 中課題整理番号:120c6
  • 予算区分:交付金、委託プロ(低コスト)
  • 研究期間:2010~2013年度
  • 研究担当者:宮地慎、松山裕城、細田謙次、野中和久
  • 発表論文等:
    1)Miyaji M. et al. (2012) Anim. Sci. J. 83:585-593
    2)Miyaji M. et al. (2013) Anim. Sci. J. 84:483-488
    3)Miyaji M. et al. (2014) J. Dairy Sci. 97:952-960