飼料用トウモロコシF1における根腐病抵抗性の圃場検定
要約
飼料用トウモロコシF1品種の根腐病抵抗性は、絹糸抽出期のトウモロコシ株元に菌培養した爪楊枝を接種することで安定的に評価できる。接種部直上の稈断面を0~4で評点し、評点2以上発病個体率の逆正弦変換値を2カ年以上評価することが適切である。
- キーワード:飼料用トウモロコシ、根腐病、ピシウム菌、圃場検定
- 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
- 代表連絡先:電話 028-838-8611
- 研究所名:畜産草地研究所・飼料作物研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
トウモロコシ根腐病はピシウム菌により発生し、根の腐敗と茎内部の空洞化による倒伏や収量・栄養価の激減、サイレージの品質低下を引き起こす重要病害である。1980年代に発生が確認されその病原はPythium graminicolaとされていたが、温暖化に伴い発生が増加し、P. arrhenomanesの関与も明らかになった。2011年には北海道十勝地域を中心に大発生するなどサイレージ生産に深刻な打撃を与えている。これまで本病に対する抵抗性の品種間差が報告されているが環境変動が大きいため、自然環境下で抵抗性品種を選抜することは困難である。圃場での接種法も提案されているが、安定的な評価方法は未だ確立されていない。そこで、圃場における根腐病抵抗性の安定的な評価方法を確立する。
成果の内容・特徴
- ジャガイモ煎汁液体培地に浸しオートクレーブ滅菌した爪楊枝を、V8培地の根腐病菌(Pythium arrhenomanes)叢上で、菌糸が爪楊枝を覆う程度まで培養する(25°C暗黒下約1週間)。絹糸抽出期前後の飼料用トウモロコシF1の稈下部に、直径3mm前後のドリル・千枚通し等で穴を空け、培養爪楊枝を挿して接種を行う。黄熟後期に接種部位のすぐ上を刈り取り、稈断面を観察して発症状況を0から4で評点する(図1)。
- 爪楊枝接種による評点2以上個体率の逆正弦変換値が、年次によらず最も安定して根腐病抵抗性の品種・系統間差を識別できる(表1)。
- 低発生時の2012年も、爪楊枝接種区で品種・系統間差が識別できる(表1、2)。
- 自然感染区の年次相関はいずれも有意(0.659*~0.900**)だが、順位相関係数で見ると順位が逆転する年があるなど(0.550~0.841**)不安定である。爪楊枝接種区は自然感染より順位が安定(0.724**~0.965**)している。
- 爪楊枝接種区における異なる2カ年の発病個体率の逆正弦変換値の平均値は、年次に関わらず自然感染区と相関が有意に高い(表3)。このことから本法で評点2以上の発病個体率の逆正弦変換値を2カ年以上評価することが適切である。
成果の活用面・留意点
- 本法は1区19個体9品種の乱塊法2反復での結果であり、現在F1品種でのみ有効性が確認されている。
- 本法に基づく爪楊枝接種を行う場合、P. arrhenomanes (MAFF- 511548)の分離菌株は、農研機構への分譲申請により畜草研から配付を受けることができる。
具体的データ

その他
- 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
- 中課題整理番号:120b0
- 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
- 研究期間:2010~2013年度
- 研究担当者:三ツ橋昇平、黄川田智洋、月星隆雄、増中章、菅原幸哉、玉置宏之、佐藤尚
- 発表論文等:Tsukiboshi et al.(2014) Plant dis. doi: http://dx.doi.org/10.1094/PDIS-01-14-0059-PDN