オオムギ食用品種は飼料用として利用できる

要約

オオムギをホールクロップサイレージとして利用する場合、食用品種および育成系統は、飼料用の2品種の中間に出穂するため、食用品種、飼料用品種、育成系統を組合せることで作期分散を図ることができ、糊熟期の乾物収量や飼料成分に遜色はない。

  • キーワード:オオムギ、北関東、糊熟期、収量、飼料成分
  • 担当:自給飼料生産・耕畜連携飼料生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

関東二毛作地帯では、飼料用イネと組み合わせる冬作飼料作物として、イタリアンライグラスより低温発芽性に優れ、嗜好性が高いオオムギが注目されている。しかし、わが国の飼料用オオムギの登録品種数は少なく、極早生および晩生の3品種が市販されているだけである。そこで、市販品種数が多い食用オオムギの飼料適性を明らかにし、ホールクロップサイレージとして利用するための転用の可能性を示す。

成果の内容・特徴

  • 供試した8品種・系統(食用品種:4品種、育成系統:2系統、飼料用品種:2品種)の中で、出穂始期が最も早い品種「ワセドリ2条」と最も遅い品種「ムサシボウ」は飼料用であり、両品種の出穂始期には7~10日の差があり、食用品種および育成系統は、飼料用2品種の中間が出穂始期となる(表1)。
  • 収穫始期の違いは、オオムギの収穫適期である糊熟期に達する時期の違いと一致することから、食用品種、育成系統、飼料用品種を組合わせることにより、収穫日を分散できる(表1)。
  • 乾物収量は、食用品種、育成系統、飼料用品種のいずれにおいても、概ね100kg/aであり、品種・系統間に差はない(表1)。
  • CP含有量は、品種・系統間に差はなく、ADFおよびNDF含有量には品種・系統間に有意な差が認められ、育成2系統のADF含有量は、食用や飼料用よりも低い傾向にある。また、推定TDN含量においては、品種・系統間に有意な差はあるものの、何れの品種・系統も飼料用イネと同等以上である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 関東地域の飼料用稲麦二毛作体系において、オオムギ品種の選定に利用できる。
  • 糊熟期以外の収穫では、結果が異なる可能性がある。
  • 秋季~春季の気温が異なる地域では、出穂始期は本試験結果と異なる可能性がある。

具体的データ

表1~2

その他

  • 中課題名:耕畜連携による水田の周年飼料生産利用体系の開発
  • 中課題整理番号:120c3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:佐藤節郎、浦川修司
  • 発表論文等:佐藤ら(2014)日草誌60(2):77-84