導入されたセンチピードグラスは放牧条件下で容易に定着し優占草種となる

要約

センチピードグラスは、雑草や野草が優占した放牧草地へ播種や移植により導入が可能で、導入地の植生により拡大の速さや被度は異なるものの、放牧条件下において優占草種となる。また、放牧を中断するとセンチピードグラスは数年で消失する。

  • キーワード:耕作放棄地、センチピードグラス、放牧、野草、優占種
  • 担当:自給飼料生産・利用・公共牧場高度利用
  • 代表連絡先:電話 028-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・草地管理研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

センチピードグラスは、省力的な管理で持続的な利用が可能なことから、牧場や耕作放棄地における放牧等で利用が増加している。センチピードグラスは蹄耕法等による導入方法や放牧利用法については多くの報告があるが、導入地植生とセンチピードグラスの定着拡大に関する情報は少ない。そこで、異なる植生に導入したセンチピードグラスの定着拡大を調査し、導入地の植生によるセンチピードグラスの定着拡大の違いについて明らかにする。さらに、放牧を中断した場合におけるセンチピードグラスの動態についても明らかにする。

成果の内容・特徴

  • センチピードグラスは、メヒシバやチカラシバ等が優占した雑草優占草地(表1)、シバ草地、アズマネザサ草地、いずれの草地においても、播種(1kg/10a)、移植(2~3葉期のピット苗を1苗/m2)のどちらの方法によっても導入することが可能で、黒毛和種繁殖牛や交雑種雌牛(体重約400kg)を2~3頭/haの定置放牧条件下で被度を拡大する(図1、左)。
  • 群落高が20cm以下の雑草優占草地(移植)やシバ草地(図1右)では、センチピードグラスの被度拡大は速く、導入後2~4年目には被度が50%以上となり、最優占草種になる(図1、表1)。一方、群落高が20cm以上の草地(雑草優先草地・播種)では被度拡大は遅い。しかし、掃除刈りを行うと、被度拡大は促進される(図1)。
  • アズマネザサ草地における、センチピードグラスの被度拡大は緩やかであるものの、導入後2~4年目にはアズマネザサに次いで優占度の高い草種となる。しかし、導入後6年目においても被度は40%以下で、最優占草種にはならない(表1)。
  • センチピードグラス草地において放牧を中断すると、センチピードグラスの被度は漸減し、4年目には消失する(表2)。このためセンチピードグラスの持続的利用には,継続的な放牧利用が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 導入地の植生により、センチピードグラスの定着拡大に必要な期間等の参考になる。
  • 本調査で使用した草地は、センチピードグラス導入前から放牧利用が行われていた。耕作放棄地等へ導入する場合は、導入前に放牧や刈り払いが必要である。
  • 本成果は、北関東地域において得られた結果である。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:預託期間拡張を可能とする公共牧場高度利用技術の開発
  • 中課題整理番号:120c4
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2013年度
  • 研究担当者:北川美弥、平野清、池田堅太郎、中野美和、西田智子、山本嘉人
  • 発表論文等:
    1)北川ら(2013)日草誌59:89-97
    2)山本ら(2012)日草誌57:197-200