子ブタの回腸粘膜からセグメント細菌が優勢に検出される
要約
子ブタ回腸粘膜に生息する細菌叢を解析すると、セグメント細菌が優勢に認められる。系統解析の結果からブタ由来セグメント細菌は動物種特異的であることが示唆される。
- キーワード:子ブタ、回腸粘膜、セグメント細菌
- 担当:自給飼料生産・利用・高機能飼料
- 代表連絡先:電話 029-838-8611
- 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
回腸末端は腸管免疫において重要な器官であり、回腸粘膜中に生息する細菌は宿主の免疫活性に何らかの役割を果たしていると考えられる。そこで、回腸粘膜中の細菌叢をRT-PCRによる16S rRNA遺伝子配列により解析する。
成果の内容・特徴
- 子ブタ(49日齢LWD交雑種)45頭より回腸末端を採取する。回腸粘膜面からTotal RNAを抽出し、RT-PCRにより16S rRNA遺伝子を増幅する。増幅産物をクローニングしてライブラリーを作製する。
- 作製したライブラリーの遺伝子配列を解読し、BLASTによる類似性検索結果から、構成菌種を推定する。また、解読した配列を用いて最尤法による系統樹を作製する。
- 45頭から得られた1951個のクローンを解析すると、セグメント細菌(Segmented Filamentous Bacteria)が優勢に検出される(表1)。
- セグメント細菌の16S rRNA遺伝子系統樹を図1に示す。子ブタから得られたセグメント細菌は齧歯類、ヒト、ニジマスとは異なる枝に位置し、動物種特異的であることが示唆される。
- セグメント細菌の検出には、雌雄差、母豚の影響は見られない。
成果の活用面・留意点
- 宿主の腸管免疫と粘膜細菌叢の関連を調べるうえでの基礎的知見として活用できる。
- セグメント細菌は嫌気性芽胞形成細菌であり、人工培地では培養できていない。
- セグメント細菌の存在により分泌型IgA産生が促進されることが報告されている。
- セグメント細菌が子ブタの免疫活性に与える効果は明らかにされていない。
具体的データ
その他
- 中課題名:国内飼料資源を活用した高機能飼料の調製利用技術の開発
- 中課題整理番号:120c7
- 予算区分:交付金、科研費
- 研究期間:2011~2013年度
- 研究担当者:田島清、大森英之、大津晴彦、遠野雅徳
- 発表論文等:Tajima K. et al. (2013) Anaerobe 23:109-111