体外発育卵母細胞をレシピエント卵子とする体細胞クローン牛の作出
要約
直径約100μmの発育途上卵母細胞を2週間培養して体外発育、体外成熟させる技術と体細胞核移植技術を組み合わせることにより、クローン牛を作出することができる。
- キーワード:体細胞クローン牛、卵母細胞、体外発育、レシピエント卵子、卵丘細胞
- 担当:家畜生産・有用家畜作出
- 代表連絡先:電話 029-838-8611
- 研究所名:畜産草地研究所・家畜育種繁殖研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ウシ核移植胚を効率的に生産するためには、発生能力の高いレシピエント卵子を豊富に準備することが重要である。卵巣内には卵子の基となる卵母細胞が多数存在するが、自然ではほとんど全てが失われる。それらの卵母細胞を利用するためには、体外に取り出して培養することによって十分に発育させなければならない。本研究では、卵母細胞・顆粒膜細胞の体外発育培養と核移植の二つの技術を組み合わせ、培養で作製されたレシピエント卵子から体細胞クローン動物を誕生させることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 卵子の基となる卵母細胞を発育途上の状態から培養して成熟卵子を作出し、体細胞の核移植によってクローン牛を誕生させる技術である(図1)。
- 直径約100 μmの卵母細胞を14日間培養すると、発育の最終段階である約120 μmへと発育し、体積においては約70%の増大となる。培養14日後の生存率は90%以上である。生存した卵母細胞の約60%が第一極体を放出し、成熟卵子となる。
- 卵丘細胞をドナー体細胞とし、体外発育卵母細胞をレシピエント卵子として作製した核移植胚から誕生したクローン牛は、順調に発育しうる(図2)。
- その後の人工授精によるクローン後代牛の誕生が示す通り、本技術で作製された卵子から生まれた体細胞クローン牛は正常な繁殖能力を持ちうる。したがって、本培養技術によりレシピエント卵子を準備することができる。
成果の活用面・留意点
具体的データ
その他
- 中課題名:生殖工学を用いた有用家畜作出技術の開発
- 中課題整理番号:130c0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2009~2012年度
- 研究担当者:平尾雄二、伊賀浩輔、竹之内直樹、志水 学、赤木悟史、ソムファイ タマス、成瀬健司、永井 卓
- 発表論文等:Hirao Y. et al. (2013) Biol. Reprod. 89(3): 57, 1-11