飼料用サトウキビサイレージの乳牛における給与水準

要約

飼料用サトウキビKRFo93-1 サイレージは乳牛に対し一般的な牧草と同様に給与できるが、泌乳牛では完全混合飼料(TMR)に混合して給与した場合、混合割合が高くなると残飼が増え、栄養状態に影響するため、混合割合は10%以下(乾物ベース)が望ましい。

  • キーワード:飼料用サトウキビ、KRFo93-1、乳牛、摂取量
  • 担当:家畜生産・代謝制御
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

飼料用サトウキビ「KRFo93-1」(以下、飼料キビ)は飼料利用を目的として育成された 日本で初めての品種であり、現在主に鹿児島県熊毛地域の肉用牛繁殖経営において利用されている。さらに、熊毛地域の酪農経営への飼料キビサイレージ普及を図るために、給与設計や栽培面積決定の目安となる乳牛への給与水準を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン種乾乳牛6頭に細断型ロールベーラで調製した飼料キビサイレージ(設定切断長9mm)を105日間飽食させた場合、1日の乾物摂取量は5.5kg程度であり、濃厚飼料を併給することにより体重の維持が可能である(図1)。また、このときの血液学的所見ならびに血漿中代謝産物濃度に大きな変動はなく、正常域内である。
  • 飼料キビサイレージをTMR中に0から20%まで混合した場合(粗濃比、粗タンパク質含量およびTDN含量は一定)、飼料キビ割合増加とともにTMR中の19mm以上の飼料片(大飼料片)の割合が直線的に増加し、これを泌乳牛に給与した際の残飼中の大飼料片割合も増加する(図2)。TMR、残飼ともに、大飼料片には飼料キビ茎部が多く含まれる。
  • 飼料キビサイレージ混合割合を0から20%まで順に増加させたTMRを泌乳牛に給与すると、乳生産量は乳期の進行に伴い低下するが、低下の程度は対照区(飼料キビを含まないTMRを給与し続けた区)と同程度であり、飼料キビ割合を要因とする乳量の低下は見られない(図4)。また、乳成分についても飼料キビサイレージ混合の影響は見られない。
  • 血漿中の尿素態窒素濃度はTMR中飼料キビサイレージ割合が15%(乾物ベース)以上の時に有意に高くなる(図3)。これは飼料キビサイレージ割合増加により飼料キビが選択的に残され、実際に摂取された飼料のエネルギーが設計値よりも低下したためと考えられる。他の血漿中代謝産物濃度ならびに血液学的所見に大きな変動はなく、正常域内にある。

成果の活用面・留意点

  • 一般的な牧草と同様、飼料キビサイレージは乳牛に給与することができるが、泌乳牛向けのTMRでは飼料キビサイレージの残飼抑止のために切断長は可能な限り短くし、混合割合は乾物ベースで10%を超えない範囲とする。
  • 飼料キビサイレージの調製法、成分等については「飼料用サトウキビ品種KRFo93-1利用の手引き」を参照のこと。
  • 飼料キビラップサイレージは開封後の変敗を避けるため3日程度で使い切る必要がある。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:家畜代謝制御
  • 中課題整理番号:130d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2007~2013 年度
  • 研究担当者:鈴木知之、境垣内武雄、神谷充、神谷裕子、服部育男、佐藤健次、寺内方克、田中正仁、樽本祐助
  • 発表論文等:Suzuki T. et al. (2014)JARQ48(2):183-193