C2C12 筋管細胞のリジン、IGF-I、グルココルチコイド濃度の変化による代償性成長

要約

培地中のリジン濃度の増加のみ、およびホルモン濃度の変化のみではC2C12筋管細胞に代償性成長は誘発できず、リジン濃度の増加とホルモン濃度の変化を組み合わせることより代償性成長を誘発できる。

  • キーワード:代償性成長、骨格筋、IGF-I、グルココルチコイド、リジン
  • 担当:家畜生産・第一胃発酵・産肉制御
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜生理栄養研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

我々は、ラットとブタにおいて、飼料中のリジン含量が不足した飼料を給与した後にリジン含量が充足した飼料を給与すると代償性成長を誘発できること、代償性成長時には骨格筋へのタンパク質蓄積が亢進していることを報告している。本研究では、それらin vivo の実験において代償性成長時に血中で変化があったリジン濃度の増加、IGF-I濃度の増加およびグルココルチコイド濃度の減少を組み合わせ、C2C12筋管細胞に代償的なタンパク質蓄積の亢進、すなわち代償性成長を誘発できるかを検証する。

成果の内容・特徴

  • C2C12筋管細胞を用いて、定法のダルベッコ変法イーグルズ培地(以下DMEM、リジン濃度0.8mM、1×)とリジン濃度のみがDMEMの1/20×(0.04mM)の低リジン培地の2種類の培地を作成する。
  • 100ng/mLのIGF-I濃度および1μMのデキサメタゾン(合成グルココルチコイド、以下Dex)濃度をそれぞれ1×として組み合わせ、リジン制限期のブタおよびラットで観察される血中濃度の変化を基に、IGF-I濃度を1/2×(50ng/mL)、Dex を1.5×(1.5μM)に調製し、それぞれDMEMと低リジン培地と組み合わせて以下の4つ培地を調製する。(1)Lys 1×, IGF-I 1×, Dex 1× (2)Lys 1/20×, IGF-I 1/2×, Dex 1.5× (3)Lys 1/20×, IGF-I 1×, Dex 1× (4)Lys 1×, IGF-I 1/2×, Dex 1.5×。
  • C2C12細胞が筋管へ分化した後、(1)Lys 1×, IGF-I 1×, Dex 1×で36時間培養する処理区をポジティブコントロールとし、(2)Lys 1/20×, IGF-I 1/2×, Dex 1.5×で18時間培養し、その後引き続き(2)で培養する処理区をネガティブコントロールとする。(2)Lys 1/20×,IGF-I 1/2×, Dex 1.5×で18時間培養後、リジン濃度もホルモン濃度も変化する(1)で18時間培養する(図1)。
  • 培地中のリジン濃度の増加とホルモン濃度の変化を組み合わせた処理によりC2C12筋管細胞に代償性成長が誘発される(図2)。一方、(2)の培地で18時間培養後に(3)あるいは(4)の培地で18時間培養する、すなわちリジン濃度の増加のみ、およびホルモン濃度の変化のみの処理では代償性成長は誘発されない(data not shown)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で確立したC2C12筋管細胞の代償性成長は、代償性成長のin vitro モデルとして使用できる。
  • 本研究はC2C12筋管細胞を用いた結果であり、他の培養細胞を用いる場合は、代償性成長を誘発する培地中リジン濃度、IGF-I濃度およびグルココルチコイド濃度について検討が必要である。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:第一胃内発酵制御因子の解明と栄養制御による産肉特性改善
  • 中課題整理番号:130e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:石田藍子、京谷隆侍(福島県総農セ)、中島一喜、勝俣昌也
  • 発表論文等:Ishida A. et. al. (2013) Biosci. Biotechnol. Biochem. 77 (11) :2302-2304