エリアンサスの再生及び収量は越冬後収穫の方が秋季収穫より良好である

要約

エリアンサスでは秋季収穫に比べ越冬後収穫の方が再生する分げつ数と収量が多い。秋季収穫では養分貯蔵部位を残す高刈(30cm)がよく、越冬後収穫では低刈(5cm)が適しているが、経年株では株中心部の生長点を損なわないよう刈高に注意が必要である。

  • キーワード:エリアンサス、刈高、再生、資源作物、収穫時期
  • 担当:バイオマス利用・資源作物生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・飼料作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

バイオ燃料技術革新計画(2008年策定)及びバイオマス活用推進基本計画(2010年閣議決定)を達成するため、イネ科多年生草本エリアンサスが長期的多収性、冬期の立毛乾燥を利用した低水分収穫による保存性・運搬性・変換適性の向上、燃料特性(低灰分・高発熱量)の面で注目されている。温帯のエリアンサスでは冬季に無機養分が茎葉下部及び根部に転流し貯蔵され、このため越冬後収穫は秋季収穫に比べて再生茎葉の生育・収量が良好になると予想される。草型の異なるエリアンサスで収穫時期や刈高が翌年の生育及び収量に与える影響を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 畜産草地研究所(栃木県那須塩原市)において2010年6月17日に栄養系で定植し、秋季(2010年11月)または越冬後(2011年2月)に刈り取ったエリアンサス系統「JW4」(茎重型)、「NS1」(茎数型)、「NS2」(茎重型)は、同じ刈高では越冬後刈取の方が秋季刈取よりも再生する分げつ数及び乾物収量が多い(表1、2)。
  • 茎重型の「JW4」と「NS2」では、秋季刈取では高刈(30cm)の方が低刈(5cm)より再生する分げつ数及び乾物収量が多いが、茎数型の「NS1」では10月の分げつ数においてこの関係が認められない(表2)。
  • 3系統とも、越冬後刈取では低刈の方が分げつ数及び乾物収量が多い(表2)。
  • 2011年5月の分げつ数と同年10月の乾物収量の間には系統ごとに直線回帰と正の相関が認められる。茎数型の「NS1」は、茎重型の「JW4」及び「NS2」に比べて5月の分げつ数が10月の乾物収量に及ぼす影響が小さい(表1、図1)。
  • 翌年の再生量を減少させる11月までの刈取は避けるべきであるが、作業上この時期に刈る必要がある場合は高刈りによって再生量を確保する。2月以降は低刈が再生を良好にし、その後の乾物生産に有利となるが、エリアンサスでは経年によって株中央部の生長点位置が高くなるため、生長点を刈り取らないよう刈高に注意が必要である。

成果の活用面・留意点

  • エリアンサスの栽培マニュアル策定に当たり、収穫期及び刈高選定の情報として役立てることができる。
  • 本情報は冬季の立毛乾燥に伴う養分の転流・蓄積が行われる環境で得たものであるため、立毛乾燥しない亜熱帯地域では適用できず、積雪により晩冬の収穫作業が困難な多雪地域では越冬後刈取は適用できない。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:セルロース系バイオマス資源作物の作出と低コスト生産技術の開発
  • 中課題整理番号:220a0
  • 予算区分:NEDO「セルロース系エタノール革新的生産システム開発事業」
  • 研究期間:2009~2011 年度
  • 研究担当者:松波寿弥、小林真、安藤象太郎、寺島義文(国際農研)
  • 発表論文等:松波ら(2014)日草誌、59(4):253-260