窒素除去を目的としたオキシデーションディッチ(OD)方式の運転指標

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要約

集落排水処理法の一つであるOD方式において、優れた窒素除去性能を発揮するための運転指標として、好気時間が有効であることを見い出した。この指標を用いて月1回程度ばっ気時間を変更することによって、優れた窒素除去性能を発揮でき、さらにばっ気のための電力消費を節減できることが可能であった。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・集落排水システム研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7534
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農村整備
  • 対象:維持・管理技術
  • 分類:普及

背景

農業用水の保全や湖沼等の富栄養化防止にとって、生活排水に含まれる窒素の除去は不可欠な対策である。このため、集落排水処理においても窒素除去が強く求められている。しかし、集落排水処理施設は規模が小さく、管理者を施設に常駐させることができないため、高度な処理であってもせいぜい週1~2回程度の巡回管理で可能な、かつ、経済的な運転の方法を開発することが必要となる。

成果の内容・特徴

  • 窒素除去のための運転指標(適正な好気時間の確保)
    OD方式では、ばっ気と非ばっ気を繰り返し行う間欠ばっ気運転が簡単かつ優れた方法である(図-1)。この方法では、ばっ気の好気状態下で硝化を進め、非ばっ気時の嫌気状態下で窒素の生物学的脱窒を行う。このため、好気状態と嫌気状態の時間配分が基本的に重要となる。好気時間は、図-2に示すように一般にばっ気時間とは一致しない。福井県内の実施設において、種々のばっ気時間による試験を行い、図-3の結果を得た。同図から、好気時間が短いと処理水の窒素濃度は高く、好気時間の増加とともに低下するが、その後再び上昇する。明らかに好気時間に適正な範囲が存在することがわかった。低水温から高水温(14~26°C)に対する共通の適正範囲は、概ね5~9時間程度と考えられる。また、適正な処理が行われている場合、ばっ気時間に対する好気時間を得るには、水温の変化に応じてばっ気時間を加減する必要がある。本調査では、水温1°Cの上昇に対してばっ気時間を0.5時間程度増やせばよいことがわかった。
  • 半年間の検証結果(週1回の定期試験)
    図-4は、上記の結果を用いて、低水温(14°C)から高水温(24°C)に到る半年間の検証試験の結果である。月1回程度ばっ気時間を変更するだけで、窒素濃度2mg/l以下の処理水が全体の約9割を占めた。実際の運転管理に当たっては、OD濃度のモニター結果から1週間程度の平均的な好気時間を把握しておくことが望ましい。また、表-1に窒素以外の水質についても処理成績を示したが、BODやSSなどの処理性能も十分に良好な結果となった。なお、水温が10°C程度以下の場合硝化等が十分進まないともされており、寒冷地での冬期の窒素除去が課題として残っている。
  • 窒素除去の経済性
    窒素除去は高度処理と位置づけられているが、高度処理のために処理コストが増加するとは必ずしも言えない。実際は、ばっ気過多の運転を行っている例もかなりあり、窒素除去を目的として適正なばっ気を行うことでばっ気に要する電力消費量を節減することができる。本研究においても、結果として従来より約35%のばっ気電力消費量が節減できた。

成果の活用面・留意点

本研究は、一部を(社)日本農業集落排水協会から受託しており、この成果は同協会等を通じて全国の農業集落排水施設の運転管理に活用される。

具体的データ

図1 OD方式処理施設の一般構造図
図2 ばっ気時間と好気時間の関係
図3 好気時間と処理水窒素濃度の関係
図4 検証試験結果:処理水窒素濃度の度数分布
表1 検証試験結果

その他

  • 研究課題名:オキシデーションディッチ法における処理機構の解析及び高度化
  • 予算区分:経常・受託
  • 研究期間:平成6年度(平成元~6年度)
  • 発表論文等:1)流入負荷変動に対するODの処理性能の安定性、第28回水環境学会講演要旨集、804~805
                      2)オキシデーションディッチ処理方式における窒素除去性能の向上に関する研究(1)、農工研技報188、25~39
                      3)農業集落排水を対象とした窒素・リン除去方式の動向、用水と廃水37(1)、39~43