裸地斜面における平均土砂流出強度式の提案

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要約

斜面ライシメータの裸地斜面における地表面流出量と土砂流出量の観測結果から、掃流砂式に基づく平均無次元掃流力と平均無次元土砂流出量の関係を表す式の系数を同定し、平均土砂流出強度式を提案した。この式の適合性は良好であった。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・水文水資源研究室、農業環境技術研究所・土壌管理科・土壌保全研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7537、0298-38-8270
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:農業工学
  • 分類:研究

背景

土壌の侵食計算に用いられているUSLE式は、多数の傾斜枠の実測値から求めた回帰式であって、土壌侵食の力学過程が考慮されていないため、圃場・地域への拡張や一雨降雨による侵食量の推定には問題が多い。ここでは、砂土及び黒ボク土の斜面ライシメータの裸地斜面における一雨ごとの地表面流出(水)量と土砂流出量の観測結果から、水理学的解析手法を用いて土砂流出の予測式を検討し、平均土砂流出強度式の提案を行っている。

成果の内容・特徴

  • 土砂流出を伴う地表面流出の発生する条件は、降雨強度が7.2mm/hr以上で、地表面流出量が0.2mm/hr以上であり、特に前者の条件は土壌の浸透能より小さいことが分かった。
  • 無次元掃流力τ*と無次元土砂流出量q*の関係式は、次式である。

    q*=A・τ*B ────────────────────────────── (1)
  • 無次元掃流力・無次元土砂流出量の定義、(1)式及び雨水流モデルの運動式から斜面の単位幅当たりの地表面流量qと土砂流出強度qbの関係は、次式で表される。

    qb=A・NP(B+0.5)・sinθ(1-0.5P)(B+0.5)・qP(B+0.5)・s-B・d1-B・g0.5 ─ (2)
    ここに、P:0.6、N:斜面の等価粗度、θ:斜面勾配、s:土粒子の水中比重、d:代表粒径、g:重力加速度。
  • 土砂流出量の連続観測は困難であるので、一雨ごとの地表面流出量と土砂流出量を、上述(1)の条件より求めた地表面流出継続時間で割った平均値で表し、以下の検討をした。56個の観測データから、(1)式の回帰係数A、Bを求めた。相関係数は砂土で0.925、黒ボク土で0.762である。土壌、斜面の物理性からs、d、Nの係数が決まるので、砂土、黒ボク土の平均土砂流出強度qb(g/s/cm)は、平均斜面地表面流量q(cm2/s/cm)より次式となる。

    砂土:qb=1.755・sinθ1.477・q1.266 ────────────────── (3)

    黒ボク土:qb=1.431・sinθ1.553・q1.331 ──────────────── (4)
  • 図1~図4に示すように、各傾斜度別に、強度式の値と実測値を比べると、砂土、黒ボク土とも全体的に一致し、特に砂土では7度以上でよく一致している。

成果の活用面・留意点

平均土砂流出強度式は、強い地表面流出の発生する7度以上の砂土斜面での適合性が特に良いことから、マサ土、赤黄色土等の受食性の高い土壌からなる圃場斜面における侵食土砂量の計算や推定に適用できる。

その他

  • 研究課題名:農地斜面における雨水の浸透・流出に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成6年度(平成3年~7年)
  • 発表論文等:ライシメータ裸地斜面を用いた降雨流出と侵食に関する研究、農土論、173、pp.11~20