ラドン・水収支法による河川水と地下水の交流解析

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要約

地下水の河川への浸出量と河川水の地下への浸透量を求めるために、ラドン・水収支法を提案し、現地に適用した。この結果、従来法では定量できなかった地下水の浸出と河川水の浸透が定量可能となった。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・地下水資源研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7200
  • 部会名:農業工学
  • 専門:用排水
  • 対象:現象解析
  • 分類:研究

背景

農業地域において水資源の有効利用を図るためには、地下水の河川への浸出量と河川水の地下への浸透量を求めることが重要であるが、流量観測を行うだけの従来の方法ではこれらを求めることはできない。そこで、本研究は水に含まれているラドンに着目し、水収支とラドン収支から地下水の浸出と河川水の浸透を同時に定量する手法を提案した。
河川水の流下に伴うラドンの損失は地下水の河川への浸出によって実測が不可能であることが多いため、水と空気の境界に仮定した停滞膜の厚さ、河川水の平均流速、平均水深、ラドンの拡散係数から算出することとした。
本研究では、まず、停滞膜の厚さの評価を行い、その結果を基にして、ラドン・水収支法の現地適用試験を実施した。

成果の内容・特徴

  • 停滞膜の厚さを評価するため、地下水の浸出が存在しないコンクリート三面張りの水路と扇状地を流れる河川の扇頂部においてラドン濃度を測定し停滞膜の厚さを求めた。
  • 調査結果と過去の研究結果から、停滞膜の厚さは調査区間が数kmの時には17~19μmとなり(表-1)、平均流速や平均水深の測定精度から、実用上は20μmとすることが妥当であるものと考えられた。
  • 河川への地下水の浸出量と河川水の地下への浸透量は、河川水の流量とラドン濃度、河川に浸出する前の地下水のラドン濃度を測定し、水収支とラドン収支をたてることによって、求めることができるようになった(図-1)。
  • ラドン・水収支法を現地に適用して、地下水の浸出と河川水の浸透を定量した。河川水の流下に伴うラドンの損失は、停滞膜の厚さを20μmとして算出した。得られた地下水の浸出量と河川水の浸透量は妥当であると考えられ、方法の有効性が示された(図-2)。

成果の活用面・留意点

この手法は、同一地質類型では広域の河川でも適用可能であり、水資源の反復利用計画に大いに役立つ。ラドンの測定は液体シンチレーションカウンタで簡単にできるため、今後の普及が期待される。

具体的データ

表1 停滞膜の厚さ
図1 解析手順
図2 現地適用例

その他

  • 研究課題名:地表水と地下水の交流収支モデルの開発
  • 予算区分:総合的開発[水保全管理]、依頼
  • 研究期間:昭和63~平成3年
  • 発表論文等:河川水と地下水の交流解析への222Rnの適用、Radioisotopes、43、38~43、1994
                      Analysis of Exchange Between River Water and Groundwater Using Radon-222, Water Down Under'94, vol.1 115~120, 1994