貯蔵施設内気流の数値シミュレーションプログラムの開発

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要約

貯蔵施設内気流の設計・制御を目的とした気流解析を行うため、k-ε型2方程式乱流モデルを用いて、空調設備、吸・排気系、農産物の配置などの種々の条件下で気流分布が予測できるようなシミュレーションプログラムを開発した。

  • 担当:農業工学研究所・農地整備部・農業施設環境制御研究室、北海道農業試験場・畑作研究センター・流通チーム
  • 代表連絡先:0298-38-7655
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農業施設
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:研究

背景

高品質で、季節にとらわれない食料の供給に対する社会的にニーズが高まる中で、生産形態は多様化し、生産や供給は周年化し、生産地は大消費地からより遠距離化している。特に、農産物の品質を保持しつつ、大規模かつ長期の貯蔵・予冷・輸送を達成するためには、最適環境を時間的かつ空間的に均一に維持するための環境制御技術が不可欠である。
しかし、施設内の環境特性を、施設や空調設備の形態、吸・排気系の形態、農産物の配置や量などと関連づけて体系的に扱った研究は少ない。また、施設内環境の時間的変化や空間分布を既存施設の実測によって解析することは、施設が大型になるほど困難が多い。
本研究では、空調設備、吸・排気系、農産物の配置などの種々の条件下で、施設内環境の時間的変化や空間分布を予測できるようなシミュレーションモデルを開発した。

成果の内容・特徴

  • 貯蔵施設内気流は通常十分発達した乱流である場合が多いので、k-ε型2方程式乱流モデルによる数値シミュレーションプログラムを開発した。
  • 本解析には、等温状態を仮定し、3次元施設内気流を対象とした。
  • 計算領域は、異形メッシュに分割した。収束性、安定性に優れたアルゴリズムを用いることとし、Adms-Bashforthの2次精度時間差分に基づくMAC(Maker and Cell)法のアルゴリズム計算により解を求めた。
  • 空調ダクト、吸・排気の気流速や農産物パレットは境界条件として設定できる。
  • 図1に示す典型的な貯蔵施設の内の一例について計算を行った結果、気流の空間分布は排気ダクトから、吸気孔のあるダクトの方向へ一様単純に流れ込む分布ではなく、数カ所で逆流や渦を形成しながら吸気孔へ向かう3次元的にかなり複雑な流れを形成していると予想される計算結果が得られた(図2)。

成果の活用面・留意点

k-ε型2方程式乱流モデルによる、空調設備、吸・排気系、農産物の配置などの種々の条件下における貯蔵施設内気流分布の予測が本プログラムにより可能である。プログラムはFORTRAN言語で作成されている。計算の実行にはミニスーパーコンピュータ以上のコンピュータが望ましい。(CONVEX C3820の場合、メッシュ数14,283で約2時間程度。)

具体的データ

図1 計算に用いた貯蔵施設の概要
図2 貯蔵施設の平均気流速の分布

その他

  • 研究課題名:貯蔵施設環境のシミュレーション手法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5~6年
  • 発表論文等:1)Effects of container type and stacking on the temperature of vegitables during room cooling., Abstracts, XXIVth International Horticultural Congress, 149, 1994
                      2)貯蔵施設内気流の数値シミュレーション手法の開発、農業施設学会大会講演要旨集、1995(発表予定)