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放流能力に優れ、かつ放流能力の調整が容易な越流頂形状として円弧越流頂を開発した。この形状は簡易形状なので施行性も良い。放流管理の安全性確保、省力化から多用される自由越流式洪水吐に適しており、また洪水調節計画との整合性確保にも有効である。
農業用ダムの管理については現在、次のような問題がある。1)県、土地改良区等、財政基盤が脆弱な組織に管理委託される場合が多く、維持管理コストがかけられない。2)ダム本体は山間部にあり管理人員確保が困難である。3)ダム適地の不足から集水域が狭小化し洪水出水が早くなっている。このため、ダム放流管理における安全性、確実性向上への要求が強まっている。4)流域開発の進展に伴い、農業用ダムに関しても洪水調節機能を付帯させる計画が増えている。したがって、ダム放流管理において洪水調節計画との整合が要求される。以上のように近年、農業用ダムの管理(特に洪水時の管理)においては、省力化、低コスト化、安全性・確実性の向上、洪水調節計画との整合、等の課題がある。前3者からダム放流施設(洪水吐(洪水調節施設も含む))はノンゲートの自由越流式で計画される事が多い。自由越流式では越流頂長が長大化するので、その越流頂形状には施工性、放流能力に優れたものが望ましい。放流能力の向上は、洪水時(特に洪水調節計画の想定を越える異常出水時)の安全性向上の点からも望まれる。また、洪水調節計画との整合のため、放流能力(流量係数)の調整が容易な事も必要である。本研究ではこのような条件を満たす越流頂形状を検討した。
本成果は国、県営の農業用ダムに適用できる。また、施工が容易な形状なので、ため池等、小規模水源施設の洪水吐にも有効である。