長大用水路系における用水到達時間を考慮した施設操作手法

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要約

幹線開水路では、需要の変動に対応した供給を図りつつ、送水効率を高めることが重要である。特に、延長の長い水路では、開水路の用水到達時間を加味した施設操作が要求される。しかし、日常管理で不定流シミュレーションにより、施設操作を決定するのは煩雑であるので、実用性を考えて、不等流解析により施設操作の方法、到達時間の算定を行い、施設操作する方法を明らかにするとともに不定流シミュレーションによりこの施設操作方法の評価を行った。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水路工水理研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7565
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設
  • 対象:計画設計
  • 分類:指導・行政

背景

幹線開水路では、需要の変動に対応して安定的に供給を図るとともに、可能な限り無効放流を防止し、送水効率を高めることが重要である。しかし、延長の長い開水路では、用水到達時間が長くなるため、水位調整施設、分水施設などの操作時刻、操作量を適切に決定することが難しい。本研究では、この用水到達時間を考慮した施設操作手法について評価を行った。

成果の内容・特徴

A国B川内のC水路において施設操作方法を検討した。水路は、延長130km、勾配1/10,000程度で水路途中に3ヶ所の水位調整ゲート、30ヶ所の分水工が設置されている。

  • 実測データをもとに2通りの流況(ケース1、2)を想定し、ケース1(送水量191.5m3/s)の流況の時に、需要の変化によりケース2(送水量159.5m3/s)を目標に流況を変更する施設操作方法を検討した。
  • この2ケースそれぞれの不等流解析を行い、分水工、水位調整ゲートのゲート開度の算定を行った。また、用水の到達時間は、2つのケースの流況における水路内貯留量の差(変化量)と流量の差(変化量)から求めた(表-1)。
  • 不定流シミュレーションモデルも開発し、不等流解析結果から得られた施設の操作方法を評価した。
  • 不定流シミュレーションでは、流況の改善を把握するため、用水の到達時間を考慮した操作方法(ケースB)と全ての施設を同時に操作した方法(ケースA)を比較した。
  • 解析結果のうち、施設操作後24時間の目標流量に対する過不足量を表-2に、中間地点に位置するG2調整ゲートの流況の変化を図-1に示した。ケースBの操作方法により、各調整ゲート通過量は、目標流量に対してほぼ満足できる範囲となり(表-2参照)、G2調整ゲートの流況も操作直後に流況変動があるものの1回の操作により目標の流況となり(図-1参照)、不等流解析によって施設操作方法を決定しても実用上十分な精度で利用できることを明らかにした。

成果の活用面・留意点

本研究によって、不等流計算により算定される水位調整施設、分水施設の操作時刻、操作量に基づいて施設を操作することの有効性が明らかにされた。そこで、実用上は非定常解析を用いなくても、不等流解析により需要の変化に対応した用水の供給と施設の操作方法が十分な精度で利用できる。

具体的データ

表1
表2 ケースA及びケースBの比較
図1

その他

  • 研究課題名:長大用水路系における水理機能の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5~6年度(平成2~6年)
  • 発表論文等:幹線水路の水管理技術の改善、平成6年度農業土木学会講演要旨集、p556~557、1994
                      Proper Water Management of The Chainat-Pasak Canal System, IEC JICA, 1993