生活排水の省エネルギー・資源循環型水質浄化システムの開発

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要約

合併浄化槽とバイオジオフィルター(植物-濾材系)水路を組み合わせた生活排水の高度処理システムを設計・試作し、夏期には、平均窒素濃度10.88mgL-1の合併浄化槽処理水を平均窒素濃度0.61mgL-1に浄化できることを明らかにした。

  • 担当:農業研究センター・土壌肥料部・水質保全研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8829
  • 部会名:生産環境・農村計画小部会・農業環境(環境資源特性)・農業工学
  • 専門:環境保全
  • 対象:
  • 分類:指導

背景

近年、都市化、混住化、生活様式の多様化などにより、農業用水を含む農村の水環境は悪化してきている。広大な農村地域の水質改善には、植物・濾材・微生物の三者の浄化機能を有効に活用した省エネルギー・資源循環型の水質浄化システムの構築が必要である。そこで、生活排水中の窒素、リンなどを貴重な資源とみなし、農山村向きの潤いのある水質浄化システムの開発を進めている。

成果の内容・特徴

  • 基礎研究で得られた知見を基に、嫌気・好気循環式合併浄化槽(容量3.54m3)とバイオジオフィルター水路(幅0.4m、水深0.2m、長さ19.5m、以下、BGF水路と略す)を組み合わせた生活排水の高度処理実証プラントを設計・試作し、5人家族の家庭から排出される生活排水(平均1,050L・d-1、窒素濃度40~50mgL-1)の浄化試験を実施した(図1)。BGF水路の流入水量と流出水量は、積算流量計と転倒升流量計で連続計測した。
  • 平均窒素濃度8.93mgL-1の合併浄化槽処理水(BGF水路流入水)は、資源植物・ハーブ水路(H水路、写真1)内を流下する間に浄化され、水路内の平均窒素濃度は12.2m地点では1.33mgL-1、19.5mの水路流出口では0.93mgL-1に低下した(6/18~26の調査、図2)。
  • 栽植植物の生育が旺盛な夏期(6/5~11/3)には、平均窒素濃度10.88mgL-1の流入水を供給した花き水路(M水路)流出水の平均窒素濃度は、4.69mgL-1となったが、H水路流出水の平均窒素濃度は、0.61mgL-1(平均窒素除去速度0.71g・m-2・d-1)となり、窒素については、雨水より低いレベルにまで浄化できることを実証した(図3、表1)。
  • 夏期のH水路流入水と流出水の平均濃度は、T-P:4.53mgL-1から2.27mgL-1、K:11.53mgL-1から3.55mgL-1、全有機炭素:5.68mgL-1から4.21mgL-1に低下した。

成果の活用面・留意点

  • 年間安定した処理水質を得るための植物の検索・組み合わせ、栽培管理法については、現在も引き続き検討中である。また、冬期の水質浄化機能の低下を少なくするため、本試験では、19.5mのBGF水路の内、12.2mをビニールハウス内に設置した。
  • 本研究は、水質浄化と同時に、潤いのある親水空間の創出、合成洗剤等の有害物質の使用自粛による、リサイクル型の生活様式への転換を目指したものであり、この資源循環・環境保全の輪を家庭から集落、地域へと広げて行かなければならない。

具体的データ

図1
図2 バイオジオフィルター水路流下に伴う窒素濃度の変化
図3
写真1 資源植物・ハーブ水路における各植物の生育状況
表1 バイオジオフィルター水路の窒素除去成績

その他

  • 研究課題名:植物-濾材系を活用した生活系排水の省エネルギー・資源循環型浄化技術の開発
  • 予算区分:科振調・生活・地域流動(生活用水)
  • 研究期間:平成6年度(平成4年~6年)
  • 発表論文等:資源植物・花き等を利用した生活排水の高度処理、用水と廃水、37巻2号、111~118、1995