パイプライン用自動給水器による水管理の省力化

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要約

低価格でしかも生産者が容易に設置できる自動給水器を用いて、現地実証試験を行った結果、週1回の点検・調整で適正な水管理が行え、無効放流も解消されることが明らかになった。

  • 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第5チーム
  • 代表連絡先:0298-38-8856
  • 部会名:総合研究、農業工学
  • 専門:農地整備
  • 対象:水稲
  • 分類:普及

背景

水稲栽培は省力化が進み、労働時間が短縮されてきているが、さらに短縮を図るためには、これまで人手に頼らざるを得なかった、水田一筆毎の水管理の省力化が必要である。
また、兼業農家の一部では給水栓を開け放ち、ポンプ場の運転期間中は常に取水する、いわゆる掛け流し潅漑を行っており、肥料や農薬の流出による水質汚染が湖沼水域等で問題化している。
一方、用水の過剰取水と無効放流は、用排水ポンプ場の運転経費の増大につながり、ひいては、水稲の生産コストを増加させることとなる。そこで、水田一筆毎の水管理の自動化による管理の省力化を図るため、最近開発された自動給水器7台を用いて、茨城県新利根村南太田の地域総合研究現地圃場(2ha)で取水量・田面水位測定及び操作性等の実証試験を行った。

成果の内容・特徴

  • 自動給水器は、茨城県内のN法人で開発されたものであり、水位感知器と潅水弁からなる。水位感知器のフロートの設定を変えることにより、自由な水位設定や間断潅漑等、稲の生育ステージに応じた、きめ細かな管理が可能となる。
  • 水田への設置は、水田に水位感知器を設置すると伴に、給水栓の後に接続ユニオンにより自動給水弁を取り付ける。このため、大がかりな配管工事を必要とせず、生産者が20分程度で容易に脱着できる。このことは、非潅漑期に取り外すことで、機器の劣化と農作業等に伴う接触破損が防止され、耐用年数の長期化につながる(写真1)。
  • 本器の潅漑全期間における性能試験は初めてであり、室内試験や短期の圃場設置では発見されなかったトラブルが2件発生した。一つは、日中の温度上昇に伴う本体の変形と水漏れであり、太陽光が直射する機器上面の材料厚と形状の一部を改良し措置できた。他の一つは水質の悪化と太陽光に伴うパイロットホース内での藻の発生で、ホースの色を白から黒に変更することで改善できた。また、潅漑期終了後の潅水弁内部の点検で、淡水性巻貝(体長2cm)の発生を確認した。水質汚濁や異物の混入が想定される地域では、本器のように常にメンテナンスが可能なことが重要である。
  • 乾田直播圃場における調査では、湛水潅漑期間の自動給水器による単位当たり取水量はポンプ場からの単位当たり送水量の約60%であった(図1)。
  • 乾田直播圃場における水位の時間変動を測定した結果、設定水位の範囲内で正常に稼働した。また、落水口の高さを上限設定水位より2cm高く設定することにより、潅漑期間中の用水の無効放流が防止された(図2)。
  • 水管理(用水管理)に要した時間は、1セット(30アール圃場に1箇所)当たり、取り付け・撤去で40分、週に1回の点検・調整(13日×5分)で65分の計105分であり、10アール当たりでは35分となった。

成果の活用面・留意点

すべてのパイプライン用水地区で利用可能である。

具体的データ

写真1 自動給水器の設置状況
図1 用水ポンプ場からの送水量と乾田直播圃場における自動給水器による取水量
図2 乾田直播圃場における自動給水器による取水時間と田圃水位の時間変化

その他

  • 研究課題名:直播様式別の適応水管理条件の解明
  • 予算区分:営農合理化(地域総合)
  • 研究期間:平成5~7年度
  • 発表論文等:自動給水器による水田水管理の省力化について、平成6年度農業土木学会関東支部大会講演要旨、(33~35)、1994