回分式活性汚泥法を対象とした凝集剤添加法によるリン除去技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

回分式活性汚泥方式の農業集落排水施設を対象とし、凝集剤を直接回分槽に添加(凝集剤添加法)してリン除去を行う技術を開発し、さらに凝集剤の添加量の設定指針を明らかにした。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・集落排水システム研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7535
  • 部会名:農業工学
  • 専門:農村整備
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:普及

背景

湖沼の富栄養化防止の観点から集落排水に対しても高度なリン除去が求められているが,従来の技術はプロセスが複雑で処理コストも高くつくため,小規模な農業集落排水施設に適しているとは言えない。本所究では、集落排水に適した,プロセスが簡素で低コストなリン除去技術の開発を目的とした。リン除去方式として凝集剤を直接生物処理槽に添加してリン除去を果たす凝集剤添加法を取り上げ,集落排水処理への適用を図った。

成果の内容・特徴

  • 本研究において開発したリン除去技術は,農業集落排水施設の処理方式として近年数多く採用されている回分式活性汚泥法を対象としている。具体的には有機物,窒素等の生物処理を行う回分槽に直接凝集剤を添加してリン除去を行うものである。従来から用いられている凝集沈澱法と本方式(凝集剤添加法)のフローを比較すると,図-1のとおりであり,従来法と比較してリン除去のための付加設備を大幅に省略でき,経済的である。
  • 実際の農業集落排水施設での実験の結果,凝集剤(塩化第2鉄液)添加により全リン濃度0.5mg/l以下の良好な処理水を得ることが可能である(実験時凝集剤未添加の場合の処理水全リン濃度平均1.4mg/l)。また,リン以外の項目の処理水質は,凝集剤添加前と同程度であり,凝集剤添加による悪影響はない。
  • 本方式によるリン除去性能は,リン流入負荷,汚泥によるリン除去量及び凝集剤添加量に左右されることから,実験結果をもとに図-2のとおり凝集剤(塩化第2鉄液)の添加量設定の指針を作成した。図-2は,流入汚水全リン濃度5.0mg/l,添加凝集剤として塩化第2鉄液(JIS K 1447 1種製品)の条件下での目標処理水全リン濃度を得るのに必要な凝集剤添加量を得るものである。

成果の活用面・留意点

本研究は(社)日本農業集落排水協会と共同して実施したものであり,本成果は同協会を通じて,全国の農業集落排水施設の計画・設計・管理に活用される。

具体的データ

図1 従来法(凝集沈澱法)との比較
図2 凝集剤添加量の設計指針

その他

  • 研究課題名:集落排水を対象とした低コストリン除去技術の開発-凝集剤添加法等による除去-
  • 予算区分:経常,受託
  • 研究期間:平成6年度(平成4-9年度)
  • 発表論文等:鉄液添加におけるリン除去能力の定量評価,
                      第30回日本水環境学会年次講演集 p.468(1996)