集水池の赤土流出防止に対する効果

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要約

国頭マージ土壌(赤土)地域に水源として設置される集水池は、圃場からの濁水を貯留、希釈することにより、集水池下流部への流出水の濁度を大幅に減少させることができる。

  • 担当:農業工学研先所・水工部・水利システム研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7541
  • 部会名:農業工学
  • 専門:環境保全
  • 対象:農業工学
  • 分類:普及・行政

背景

沖縄県には国頭マージ土壌(通称「赤土」)が広く分布している。赤土は、透水性が悪く、微細粒子を多く含み、豪雨等で流出し易い。このため、沿岸海域を汚濁し、サンゴ等の生態系に悪影響を及ぽすので、赤土の流出防止対策が必要である。他方、沖縄県の畑作地帯では図1に示すような集水池を地区下流部に設け、水源として利用している。本研究では集水池の赤土流出防止効果を明らかにし、今後の赤土流出防止対策として集水池の設計・運用の指針を得ることを目的とした。

成果の内容・特徴

本研究では沖縄本島北部の名護市に設置されている長浜原集水池を研究対象として選定し、各種の調査を実施した。(表1)

  • 1995年に降雨直後の集水池内及び周辺水路の濁度を2回調査した。6月中旬の調査結果を図2に示す。集水池への流入水濁度は排水路2カ所平均で700NTU(*1)を越え、10,000NTUにも達する場合もあったが、流出水は、162NTUと大幅に減少していた。池内では表層に比較して底層部の濁度が高い。
  • 集水池内下流部に表層水の濁度、水位及び雨量を10分毎に連続観測するシステムを設置し、降雨と池内濁度の関係、降雨流出特性等を明らかにした。このうち1994年5~6月の表層水の濁度と降雨の関係は図3のとおりであるる。表層水の濁度は無降雨では10~20NTUで変動しているが、6時間雨量で40mmを超えると増加する。観測期間中の最大値は450NTUであった。
  • 貯水容量に対する流入量の割合と、その時の表層水の最大濁度は図4に示すとおりである。この図より、貯水容量の約37%の濁水の流入があると池内の濁度は285NTU(*2)に達する。従って、濁度を285NTUに抑えるためには、集水池容量として流入水量の約3倍を確保する必要がある。

(*1)1NTUは比濁計濁度単位(Nephelometric Turbidity Unit)で、本地区集水池の貯留水の場合、NTUとSS(mg/l)=NTUとはSS*0.350の関係にある。
(*2)85NTUはSSlOO(mg/l)に概ね等しく、これは農業(水稲)用水水質基準に相当する。

成果の活用面・留意点

集水池は水源施設として重要であるばかりでなく、赤土流出防止の機能も有している。従って、赤土等の表土流出が予測される潅漑事業計画を策定する場合には適切な容量の集水池を含む計画とすること、また、選択放流施設・選択取水施設を設置すること等が重要である。しかし、赤土の流出防止対策は集水池だけではなく、圃場等の発生源対策を含めた総合的な対策が重要である。

具体的データ

図1 集水池システム模式図
図2 降雨直後の濁度分布
図3 降雨量と濁度の変化
図4 流入量と濁度との関係
表1 集水池系における土の物理的性質

その他

  • 研究課題名:集水池の土砂流出防止機能の解明及び最適管理法の開発
  • 予算区分:公害防止(赤土流出)、依頼(沖縄総合事務局)
  • 研究期間:平成7年度(平成3-7年)
  • 発表論文等:集水池系における流化赤土の分布特性、農土学会講要、pp188-189(1994)
                      長浜原集水池の水質及び底泥調査結果、農土研技法191、pp1-16(1995)
                      集水池における水質特性、農土学会講要、pp526-527(1995)