フィルダム監査廊の長期挙動観測結果

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要約

監査廊打設時からダムの湛水試験に至る10年間、監査廊の挙動観測データを収集した。収集したデータを整理し、監査廊の長期挙動パターンを明らかにした。また、監査廊の長期挙動に影響を与える要因の分析を行った。その結果、監査廊く体の温度変化が監査廊挙動の主要因であることを明らかにした。

  • 担当:農業工学研究所・造構部・土木材料研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7573
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設
  • 対象:挙動観測
  • 分類:研究

背景

フィルダム監査廊は、フィルダムの安全管理を目的として、ダム基礎地盤内に設置されるコンクリート構造物である。監査廊の損傷は、ダムの安全管理業務に深刻な影響を与える。また、監査廊の損傷はダム堤体の損傷を引き起こす危険性を有する。このように監査廊の安全性評価は、ダム本体の安全性評価にとり極めて重要な問題である。
監査廊の安全性を評価するためには、監査廊の挙動(監査廊に生じる応力・ひずみ・変形等)を正確に把握することが必要である。しかしこれまでに、監査廊の長期挙動や監査廊の挙動に影響を与える要因について論じた報告はほとんどない。そこで、本研究では、監査廊打設初期からダムの湛水試験に至る10年間にわたり、監査廊の挙動観測データを収集した。また、監査廊の挙動に影響を与えている要因について分析を行った。これらの結果は、監査廊の安全性評価の基礎資料となる。

成果の内容・特徴

  • 監査廊の打設初期の挙動を明らかにした。図-1に打設初期の監査廊の変形挙動パターンを示す。この図は、計測データ(ひずみ計、コンクリート応力計)から、監査廊の変形挙動を推定し、モデル化したものである。
  • 監査廊天端部の鉄筋応力は、監査廊打設初期から盛土開始期間に、大きく引張方向にドリフトする。その後は、鉄筋応力は周期的に変化する。この周期的変化の主要因は、監査廊躯体の年間温度変化と考えられる。また、盛土荷重が増加すると、監査廊天端外側の鉄筋応力は引張方向に、内側の鉄筋応力は圧縮方向に変化する。(図-2)
  • 鉄筋応力の長期変動は、監査廊の打設時期の影響を受ける。すなわち、夏期に打設された監査廊ブロックより秋冬に打設された監査廊ブロックに生じる鉄筋応力の方が、年間での周期的な変動幅が小さい。(図-3)
  • 監査廊の継目変位(ダム軸方向)も、監査廊躯体の季別温度変化の影響を強く受ける。すなわち、監査廊の継目(ダム軸方向)は、夏期(8,9月)に閉じ、冬期(12~3月)に開く季別変位をする。(図-4)

成果の活用面・留意点

本成果は、監査廊の挙動メカニズムを解明するための基礎資料となる。また、監査廊の施工・安全管理業務を行う際の参考資料となる。しかしながら、本成果は、比較的基盤が良好なある特定のフィルダムに設置された監査廊の挙動をまとめたものである。他の条件の異なるダム(例えば軟岩基礎に建設されたフィルダム)の監査廊の挙動は、本成果と必ずしも同様な挙動を示さない場合があることを留意されたい。

具体的データ

図1
図2 監査廊天端部における鉄筋応力変化
図3
図4

その他

  • 研究課題名:フィルダムにおける監査廊の挙動観測
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成7年度(昭和60年-平成7年)
  • 発表論文等:監査廊の打設初期および盛立中の挙動について,農業土木学会誌59 (9), pp.49-54, 1991