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一定の流入流量で圃場に水を流し,ある時間間隔で水足の前進距離及びその時の流路に沿った湛水深の分布を測定する.本方法では,その測定結果に基づいて,一筆圃場の平均的な値として,浸入式の定数を直接決定することができる.
一筆圃場といえども土壌への水の浸入性は平面的にみて不均一であり,円筒浸入計による数個所の測定結果に基づいて,圃場の代表値となる浸入式の定数を得ることは困難である.そこで,一筆圃場の平均的な値として,浸入式の定数を直接決定する方法を確立した.
水足の前進距離は,経過時間,流入流量,地表の湛水量,地中への浸入水量の関数となる.浸入水量の項にkostiakovの浸入式(D=ctn)を組み入れれば,次式となる.
ここに、t:経過時間, l:水足の前進距離, q:流入流量(一定値),h:水足の前進距離 までの湛水深の平均値, F:流入水量に対する地表湛水量の比を表す係数, a:a=Ctn/h=D/h, D:上流端における浸入水深, c, n :浸入式の定数.
aが小さな部分では(2)式、大きな部分では(3)式を用いて,係数Fを計算する.Fとaの関係をFig.1に示す.(2)式の右辺は30項用いたが,(3)式の右辺の項数はnの値によって決まる.なお,浸入式(D=ctn)の定数(c、n)の決定方法は,次のとおりである.
1水足前線を記録するために,圃場面に一定間隔で格子状に目印をつける.同様に,湛水深の分布を測定するために,複数の測定ラインを定めて,一定間隔で杭を打つ.
2流入流量を一定(q)として,圃場に水を流す.そして,ある時間間隔で,水足前線を記録して,水足の前進距離(l)を求める.その時の流路に沿った湛水探の分布を測定して,水足の前進距離までの湛水深の平均値(h)を求める.
3経過時間及び水足の前進距離がある程度以上離れており,流入流量と水足の前進状況が安定している2組のデータ(q,li,ti,hi)と(q,li+1,ti+1,hi+1)を選定する
4(q,li,ti,hi)に基づいて,(1)式によりFiを計算する.次いで,nの値を仮定して,Fig.1からFiに対応するaiを読み取る.同様に,(q,li+1,ti+1,hi+1)に基づいてFi+1を計算し,仮定したnの値に対応するai+1を読み取る.それらの関係は(4)式となる.
(4)式において,nの値以外は総て既知の値である.上式で計算したnの値が,仮定した値に近似していなければ,nの値を仮定し直して,計算を繰り返す.
5ai =citn/hiとai+1=ci+1ti+1n/hiから,それぞれciとci+1を計算し,その平均値をcとする.このようにすれば,定数cとnを決定することができる.
Table 1に定数cとnの計算例を示した.q=0.1362/min-cm, h(測定値), c=3.222, n=0.15を(1)-(3)に代入して求めた水足の前進距離は測定結果と良好な一致を示した.
本成果により,一筆圃場の平均的な値として,浸入式の定数を決定することができる.なお,本成果により決定される浸入式の定数は,水足の前進距離及び堪水深の分布の測定誤差に大きく左右されるため,充分な注意が必要である.