衛星データを用いた海岸線付近での地下水湧出地点の探査手法

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要約

地下ダムの建設計画に資するため、衛星リモートセンシングによる熱赤外データを用いて海岸線付近での地下水湧出地点を探査する手法を考案し、その有効性を明らかにした。

  • 担当:農業工学研究所・地域資源工学部・土地資源研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7671
  • 部会名:農業工学
  • 専門:資源利用
  • 対象:計測・探査
  • 分類:研究・行政

背景

地下ダムの建設を行って、未利用のまま海へ流出している地下水の有効利用を図る事業がある。地下ダムの建設計画を進めるに当たり、地下水湧出の位置や規模などを含む地下水流動の実態を把握することが必要である。海岸線付近での地下水の湧出点は海底に存在する場合があり、広大な海岸線付近のエリアから湧出地点を発見するためには多大な労力が必要である。そこで、衛星データの蓄積、広域性及び周期性を生かし、このデータを利用して海岸線付近での地下水湧出地点を探査する手法を考案し、現地に適用してその有効性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本手法(図1)は、地下水と海水の水温差に着目して、ランドサットTMデータのバンド6(熱赤外データ)から海水面温度の空間分布の異常を検出し、地下水湧出地点を推定するものである。本手法を適用した地区は、沖縄本島南部である。この地区では、夏季において海水面と地下水との水温差が4~8°C(海水面>地下水)となる。湧出水が海水面温度に与える影響をみるためには、湧出水と海水の間に十分な温度差があり、湧出水量が大きく、海域の水深が小さいことが望ましい。そこで、現地に適用するにあたり、地下水温、海水の温度、潮位、降水量のデータから探査に有効な観測データ(1992年5月28日観測)を選定し、同データを含む9時期の熱赤外データの空間分布図を作成した。
  • 熱赤外データの空間分布図をみると、潮位の低い時期には珊瑚礁域と沿岸域の海水面に明瞭な温度差(珊瑚礁域>沿岸域)がみられた。しかし,1992年5月28日の珊瑚礁域の一部(図2中の矢印付近)では、潮位が低いにもかかわらず、熱赤外データ値の分布から海水面の温度が低いことが分かった。これは、海水より低い温度の湧出水が珊瑚礁域に流出して生じたもので、この付近に地下水の湧出地点が存在するものと推察された。この推察結果と現地踏査で確認した地下水湧出地点(図3)及び水温差の傾向が一致していることから、本手法の有効性が明かになった。

成果の活用面・留意点

本手法は、珊瑚礁が存在する海岸線部に対して適用可能と考える。

具体的データ

図1 海外線付近での地下水湧出地点の探査手順
図2 海水域における熱赤外データの空間分布図
図3 現地調査で確認した地下水湧出地点

その他

  • 研究課題名:リモートセンシングによる沖縄島しょ部海岸線での地下水湧出状況の調査手法
  • 予算区分:経常、依頼
  • 研究期間:平成7年度(平成5-7年)
  • 発表論文等:衛星リモートセンシングによる海岸線での地下水湧出状況の把握、平成7年度農業土木学会大会講演会講演要旨集、pp.72-73, 1995年