パイプラインにおける分水流量設定のためのバルプ開度決定支援システム

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要約

水工技術の研究者らが定常流解析によってバルブ開度を決定している方法を用いて、水管理者が分水流量に対するバルブ開度をパソコンで簡単に計算するバルプ開度決定支援システムを開発した。

  • 担当:農業工学研究所・水工部・水理制御研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7544
  • 部会名:農業工学
  • 専門:水理学
  • 対象農業工学
  • 分類:

背景

我国ではかんがい用水路のパイプライン化が進んで、水管理は管理者がバルブを操作して分水流量を設定している。しかし、パイプラインでは一ヶ所の分水バルブを操作すると他の分水工の流量が変化するため、管理者はバルブの開度調整に苦労するという問題がある。このような関係から、研究者らは定常流解析でバルブの開度を求める方法を提案しているが、水管理者は水理計算が簡単にできないため、この方法が使われていない。
そこで、本研究では、水利施設の管理事務所にあるパソコンを用いて、水管理者が、分水流量に応じたバルブ開度を簡単に計算できるバルブ開度計算パッケージプログラムを開発し、バルブの開度を決定する支援システムとすることを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 開発したシステムは図1に示すように、プログラムを起動すると前回の分水流量が表示される。つぎに、分水流量のデータを写真1のように対話形式で入力すると、水理計算を行なって分水に必要な開度(必要開度と表示)が表示される。そこで、計算した開度を見て、操作可能な開度(実際の操作では5%程度のきざみ幅になっている)を入力すると、分水流量を計算して図2のように表示する。操作可能な開度に対する分水流量が許容範囲内であれば印刷して、操作するバルブと開度を決定する。
    また、このシステムでは、入力した分水流量が分水できない場合には、それを判断して表示するようになっている。
  • 管路のモデル化は、管路の路線図に従って図3に示すように節点番号を付けた系統図を作成する。この系統図の節点番号に対する管径、流速係数などの損失に関する係数、管路長、分水工出口高さ、初期値等のデータを表1に示すように作成する。バルブ、屈曲などは管路長が0.1m以下で判定するようになっている。これらデータは水理計算を知っている技術者が現地のパイプラインの資料に基づいて作成する。
    このシステムは、管路などのデータを表1のように作成すればどの地区のパイプラインにも適用できる汎用プログラムとなっている。
  • 図3に示すN用水では、このシステムをバルブ開度の決定に使用している。このシステムで分水流量を計算(計算流量)して、実際の分水流量(観測流量)と比較すると図4に示すように計算流量と観測値は良い一致を示す。

成果の活用面・留意点

パイプラインの抵抗係数などは経年的に変化すると考えられるので、分水流量をチェックして抵抗係数などを修正する必要がある。

具体的データ

 写真1 対話形式での操作状況
表1 管路モデルのデータ
図1 システムを使ったバルブ開度決定の流れ
図2 操作開度に対する分水流量の表示画面
図4 バルブ開度に対する計算流量と実際の分水流量の比較
図3 N用水のパイプライン系統図

その他

  • 研究課題名:灌漑用パイプラインの水管理に必要な水理制御技術の研究
  • 予算区分:経常・特別研究員
  • 研究期間:平成7年度(平成5-8年)
  • 発表論文等:農土学会講演集、1995、pp.30-31
                      農土学会講演集、1995、pp.32-33