潅漑地区の立地及び水管埋形態等の要因が干ばつ被害に及ぼす影響度

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要約

異常少雨による干ばつ被害の発生に対しては、潅漑地区の立地区分や水管理形態等様々な要因が影響を及ぼしている。被害面積率に与える影響は、番水実施面積率、水源の種類、地区面積規模、流域内における立地区分の順に大きい。また、面積当たり渇水対策経費は、地区面積規模、立地区分、用水補給実施面積率の影響が大きいことを明らかにした。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・上席研究官室・施設管理システム研
  • 代表連絡先:0298-38-7677
  • 部会名:農業工学
  • 専門:基幹施設・環境保全・農村整備
  • 対象:維持・管理技術
  • 分類:行政・指導

背景

潅漑地区の利水計画は、10年に1回程度の渇水時に通常の水管理を行ったときの必要な水量を基に計画されている。従って計画を超す異常渇水時には、干ばつ被害を回避したり最少化するため番水、用水補給など様々な対策がとられる。干ばつ被害発生面積や渇水対策に要する経費は、気象条件の類似する地域の下でも潅漑地区の立地、水管理形態等の要因により異なることから、本研究は潅漑地区の干ばつ被害に与える要因とその影響の程度を明らかにし、干ばつに対する耐性の高い潅漑システム構築の基礎とすることを目的とした。
解析は、1994年度北陸農政局管内の干ばつ実態調査緒果による。調査した潅漑地区は過去に農業農村整備事業が実施された173地区、その合計面積は管内全農地面積の56%にあたる。

成果の内容・特徴

  • 北陸地域における1994年6~8月の累計降水量は平年比40%以下と小さく、一部地域に干ばつ被害を生じた。干ばつ被害面積及び渇水対策経費と潅漑地区の流域内における立地区分との関係を見た(図1)。一つの潅漑地区の中で干ばつ被害の発生する面積は、水利用が集中する大河川下流域に立地する地区で高く、中山間地域がこれに次ぐ。また、面積当たり渇水対策経費は中山間地域程高く、大河川下流域程低い。
  • 干ばつ被害の発生を支配する要因とそれらの影響程度について、統計解析手法の一つである数量化理論I類を用いて分析した。目的変数は 1干ばつ被害面積率 2面積当たり渇水対策経費とし、説明変数は、立地及び水管理に関する代表的な7項目を選定し、各項目について実態調査結果を参考にカテゴリーを設定した(図2)。
    干ばつ被害面積率に関しては、番水を実施した面積率の影響影力が大きく(図2中、レンジが大であるほど影響力が大きい)、水源区分、面積規模、立地区分の要因もほぼ同程度の影響を与えている。番水面積率は、広範囲で実地した方が被害面積率がかえって高いことを示しているが、これは広範囲で番水を必要とするような水需給逼迫の地区は、結果的に被害面積が増大することによる。水源区分ではダムを有する地区は被害が少なく、異常渇水に対してもダムの有効性が示された。面積規模は、大きいほど被害面積率が低下する方向へ影響する。
  • 面積当たり渇水対策経費に影響を与える最大の要因は面積規模で、潅漑地区面積が大であるほど経費は減少し、有利性が顕著である。続く要因は、ほぼ同等の影響力で立地区分と用水補給面積率である。立地区分では、大河川下流域へ近づくほど低下し、用水補給を広範囲に行えば大きく上昇する方向へ影響する。また、他の要因の影響は相対的に低い。

成果の活用面・留意点

北陸地域における分析であるが、分析項口、カテゴリーは一般的な内容を設定しているので、他地域に於いても干ばつ時に重点的に対応すべき地区の選定及び対策内容検討の参考としうる。また、今後の干ばつに対する耐性の高い潅漑計画策定の参考となる。

具体的データ

図1 地域別干ばつ被害面積率及び渇水対策経費
図2 灌漑地区の立地等の要因と干ばつ被害への影響度

その他

  • 研究課題名:利水運用システムにおける危機管理方式の解明
  • 予算区分:経常・依頼
  • 研究期間:平成8年度(平成7~9年)
  • 研究担当者:宮本幸一, 堀川直紀
  • 発表論文等:宮本幸一:異常小雨時の渇水対策の始期と累計降雨量差, 農土学会講要集,pp.290~291(1996)
    宮本幸一, 鎌田新悦:北陸地域における平成6年度の異常小雨と水管理対応,農土学会応用水文部会, 応用水文, pp.45~50(1996)